ひどい別れ方をした元カノがホームレスになってたからメイドとして雇ってみた

空飛ぶ概念ミーアキャット

プロローグ

第1話 元カノと元カレ

 朝霞あさか ライトは帰りだった。時刻は9時ごろ。街はくらやみに包まれ、治安がいいとは言い切れない夜の時間だ。

「あの……ご飯かお金を恵んでくれませんか?」

 ライトはかけられた声が間違いなく乞食目的であることに気づいた。しかし、振り向いた。なぜなら。


「お前、カナデだよな」

 元カノだった。


「は? え? ライト!?」

 彼女は仙石せんごく カナデ。2年前までライトの文字通りの彼女だった。美しいロングヘアと巨乳がトレードマークだった彼女だが、今では全てがボロボロの物乞いだ。


「カナデ。ご飯欲しいか?」

「あ、あんたなんかにもらわないし!」

 都合よく、カナデの腹は空腹を訴えてしまう。


「お腹減ってるんだろ?」

「減ってない! もうどっか行って!」

「おいおい、そっちから話しかけてきてどっか行ってはないだろ」

「うるさい一生童貞男」

 その言葉にライトは壮絶な怒りを覚えた。


「そっか〜。残念だな〜。せっかくここにある100万円あげようと思ったのになぁ」

 ライトは手に持っていたアタッシュケースをドヤ顔で開ける。


「そんな大金どこから持ってきたのよ」

「え? こんなの端金だろ?」

 ライトは株で尋常じゃないほど儲けていた。


「……1枚だけでもくれない?」

「えー。一生童貞男とか言われちゃったらあげれないなぁ」

「……わかった。取り消すわ」

「プライドとかないの?」

 ライトは目の前の元カノを嘲笑う。


「……親が借金を全部私に押しつけて大変なのよ」

「へぇ、じゃあうちで働く?」

「……あんたなんかに」

「年収1000万にしてあげようと思ったのになぁ」

 その言葉にカナデは顔を真っ赤にして土下座した。彼女はもうライトに縋るしか手段がないと思ったようだ。


「ライト、働かせて」

「口の利き方が鳴ってないな。「おかえりなさいませ、ご主人様」って言ったら雇ってやってもいい」

 カナデの顔は、さらに真っ赤になった。


「うぅ……お、お……おかえりなさいませ……ご主人様……」

「大嫌いな元カレのメイドになる気分はどう?」

「……うるさい」

「ご主人様にそんな口の利き方」

「すみませんでした」

 土下座するカナデを優しく起こしたライトは悪意のある恋人繋ぎをしながらカナデを自宅へと連れ帰った。




 カナデがシャワーを浴びている間に、ライト宅には宅配便が届いていた。

 ライトはハンコを押して受け取る。ちなみに品目は衣服。


 カナデは全裸で風呂から出てきた。

「……なんで全裸」

「え、私は性奴隷にされるんじゃないの?」

「するわけねえだろ!」

 ライトは女性の裸体を見たのが初めてだった。動揺が隠しきれない。


「一生童貞男を取り消させたからてっきりパンパンされちゃうのかと」

「行為を擬音で示すな! てか服着ろ!」

 カナデに段ボールを投げつけるライト。段ボールの中身は。

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