第4話

 ぐっ!!


 続いて正拳と飛び膝を影にぶち当てると、影がくぐもった声を発し、普通の影に戻った。

 地面に赤い滴がしたたり、真っ赤な水たまりをつくっていた。

 それは首筋からの血だった。


 次もその次も、そしてまたその次も……いつまで持つだろ……う……か……いつでも死ねる恐怖を刻んでやろう……


 影の声が地の底からの唸り声のように聞こえた。


「ふん! 影斬りの刃で叩っ斬ってやる!」


 俺は鞄を片手で持ち、ハンカチで首筋を押さえた。



 ふふふふふふ。お前では探せない……いや、一人では無理なのだ……



 学校生活に家庭生活。通学路。遊び場のカラオケボックス。寝室に風呂。全てが危険領域となった。


 四六時中。影に背後を狙われるのだから。どうしても何か対策が必要だった。

 

 出血が激しいので、ハンカチが真っ赤だった。

 踏切で立ち止まる。

 首筋の出血は圧迫止血で、いくらかやわらいでいたが……。

 

 ドンッ!

 急に背中を強い力で押された。


「わー!!」


 俺は遮断機寸前で踏みとどまると、次の衝撃に備えた。


 犯人は影だ。


 だが、遮断機の向こう側にいる一人のクラスメイトが、手鏡で俺を照らしていた。


 次の衝撃はない。


「そうだ! 光だ! 光で影の向きを強引に変えることができるんだ!」

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