第2章 11 『!? な、何? 誰かいるの!?』
御影のその頼みは、道瑠にとって予想外なものだった。
「えっ、どうして?」
「全ての元凶はまーアレとして、僕もあるてさんにめっちゃしつこくしちゃったからね。前に言ったでしょ? 何らかの形で謝りたいって。そろっそろね?」
そして御影の声はいつもの調子に戻った。
「まあ確かに。でも兄さんからあるてに連絡する手段は無いし……なるほど、それで僕が必要なんだね?」
「その通りを左へ右折」
「あるてにも兄さんが謝りたいって言ってたとは言ったけど……どう話を切り出そうかな。取り敢えず兄さんとあるて2人きりだとかなり警戒すると思うから、僕も居合わせた方が良いと思うけど」
「お、言うねぇ道瑠くん。そんだけのコト言えるようになって……。明日の夕飯は赤飯だなあ」
「茶化さない」
「えー道瑠くんのいけずぅ。……でもありがと」
「どう致しまして。まだ起きてると思うから連絡してみるね」
そう言うと道瑠がスマートフォンをポケットから取り出し、チャットを送ろうとする。
「あ、ちょーっと待った。そのスマホ、ちょっと貸して?」
そしてそれを御影が制止させる。
「え、何するの?」
「こう言う時の大変使えるライフハック」
「はあ……」
道瑠が御影に渋々とスマートフォンを手渡す。すると御影は目を閉じて、画面を見ずにスマートフォンを操作し始めた。
「何やってるの?」
「だからライフハック。あるてさんにこう連絡した方がもしかしたら良いかもよって言うね。はい送信完了」
道瑠の質問に答えている間にも操作は続き、送信を終えると御影はスマートフォンを返した。
「因みに画面見なかったのは、流石に2人の会話を無断で覗くのは人としていけないからね」
「……変なこと送ってないよね?」
「おおひどいひどい。もっとお兄さんを信じなさい」
「だから日頃の行い。……あ」
スマートフォンの通知が鳴った。道瑠が画面を確認する。
あるて
こんばんは。わかりました。
画面上にはこのような通知が表示されていた。御影が何て送ったのか確認する。
しじみ
こんばんは、夜遅くにごめんなさい
少しお話出来ませんか?
声が聞きたくなって
「……何で画面見ないで漢字まで正確に打てるの――って、」
「ん?」
「待って。僕の心の準備は!?」
「ひひッ、それだよそれ。道瑠くんのその様子が見たかったんだ」
慌てている様子の道瑠を見て、御影は心底から愉悦を感じている。
「でもさあ。あるてさんの声聞けるの、嬉しくないのかい?」
「それは、まあ……」
「ほら、通話したいって送ったのは実質道瑠くんなんだ。あるてさんを待たせるのも良くないよ?」
「う……うん」
しじみ
ありがとうございます
掛けますね
こう返信すると待機していたのか、瞬時に既読が付いた。そのまま発信ボタンを道瑠は押す。
(緊張するなあ……)
一度だけだが実際に会って遊んだこともあるのにどうしてだ、と思いながらスマートフォンを耳元に持っ――て行こうとした時。
「あ、スピーカーフォンでお願い。僕も話すからね」
御影がそう言い切ると同時に、発信音は途切れた。道瑠はスピーカーフォンに設定して、スマートフォンを机の上に置いた。
「も、もしもし……」
『もしもし。こんばんは』
「えーっと、電話大丈夫だった?」
『うん、大丈夫。ちょっとびっくりしたけど』
「ごめん、それ――あ、ちょっと待って?」
『え? う、うん』
道瑠が話を中断させたのは、
「あのさあ……」
「だぁっ、だあってーぇ。プッ、クク……、初々しい……めぇっちゃ初々しいんだもん……!」
声を押し殺しているため、まるで過呼吸を起こしているかのような声で爆笑している御影がそこにいたからだ。
『!? な、何? 誰かいるの!?』
「あっ、えっ、えーっと……」
これには流石にあるても驚き、道瑠も何から話せば良いのか困っていると、落ち着きを取り戻しつつある御影がそこに割って入った。
「はあ……はぁ……。あ、どうもー道瑠くんの兄の御影ですよーっと。いつも弟が世話になってるね」
『はい? ……えっ、兄? お兄さん? 道瑠……?』
「ふむ。これはそうか、僕から説明した方が良いみたいだね」
混乱するあるてに対し、御影は通話に至る経緯を理路整然と説明をした。
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