第1章 23 (やっぱ、平木さんって……)
公園を出たあるてと道瑠は、お互いのことを知ろうと自分のことを話し合いながら市街地へと向かうべく歩いている。
「――で、あるての誕生日って何時なの?」
「2月5日だよ」
「…………えっ?」
あるての誕生日を聞いた途端に道瑠が歩を止める。
「なっ、何!?」
「あの、僕も2月5日なんだ」
「……マジで?」
「うん。マジで」
「うっそでしょ、凄い偶然じゃん!」
「ね。本当に」
同い年同士でもあるため、本当に同じ日に生まれたことに驚きを分かち合う。
「てことはお互い、来月にはすぐ誕生日が来るね。プレゼント考えなくちゃ」
そしてそこから、道瑠が話を展開させる。
「そうだね。でも私、今これと言って欲しいのって無いんだよなあ。いやあるにはあるけど液タブとかもっと新しいタブレットとか、お金を出してもらうには申し訳無い額の物だから」
「実を言うと僕も無いかな。話振っておきながらだけど」
「ご飯を奢るにしても、奢り合うことになるから変な話だし……」
「うーん……考えなきゃ」
「私も。最悪ぴよに頼ってみるかな」
(何度聞いても『ぴよ』って違和感凄いな……)
道瑠は自分が知っている灯夜を思い出す。袖にヒヨコの付いたヘアゴムを着けていたが、それを抜きにしてもあの冷ややかでおとなしい雰囲気からはとても『ぴよ』と言う渾名は想像出来なかった。
(もし今後あるてと平木さんと3人って時は、どんな平木さんになるんだろう……? あ、そうだ)
「そう言えばその、あるてから見て平木さんってどんな人なの?」
自分の知らない灯夜を知るべく、道瑠はあるてに尋ねてみる。
「んーそうだなあ……。ふわふわほよほよしてて明るいから接しやすいし、そこに結構助けられてるかな。ほら、私目付きが鋭いし人と話すの苦手だから。それでもクラスで普通でいられるのは、きっと灯夜のお蔭」
「そ、そうなんだ」
「うん。クラスでもマスコットみたいな感じかな。それでも生徒会入ってるしテストも大体90点台とかだし、要領も良いしで悔しいけどめっちゃハイスペック」
「お、おお……」
道瑠の中の灯夜のイメージ像は例えるなら水と油のように纏まらなくなり、更にそこに追い打ちが掛かる。
「で、たまに刑法ネタぶち込んでくる。ぴよが道瑠に失礼働かしたこと知った次の日に軽くチョップしたんだけど、その時も『刑法第208条に抵触するよぅ!』とかほざいてたからね」
「えぇ……」
最終的に、思考放棄に至った。
「凄いね色々と……。あるてのいない所でもそんな感じなのかな? 例えば一人でいる時とか」
「いやーわからない。でも疲れないのかな、ずっとあんなほよほよしてて。ハッ! もしかして裏の顔が……!? いやまさか」
道瑠としては本当のことを凄く言いたかったが、信じてもらえるかわからない上、後が怖そうに思えたためやめた。
(やっぱ、平木さんって……)
道瑠がこう思い、
(無いと思うけどもしも裏の顔があるのなら……)
あるてがこう思い、
((恐ろしい人だ……!))
同時にこう思った。
同時刻。
(あるちゃん、仲直り出来たかな)
その灯夜は一人、外を歩き何処かへと向かっていた。
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