第1章 19 「おはようコノヤロウ」
あるて
こんばんは。
こちらこそ感情的になってしまい失礼なことをしてしまいました。ごめんなさい。
やはり私がされたことに対するショックは大きく、今もとても怖いです。
絵を描き始める直前にあるてはこう返していた。それに対して来ていた返信を読み上げ、灯夜に聞かせる。
しじみ
まずは返信ありがとうございます。嬉しいです
そしてそうですよね……本当に申し訳ないことをしてしまいました
このままずっと隠し続けていてもお互いのためにはならないので、早めに伝えなきゃいけないと思ったのですが軽率でした
それでは……これでさよならということでしょうか?
それだけお聞かせください
(あの馬鹿……折角ここまで手伝ってあげたんだからもうちょっと頑張ってよ。でもしつこく食い下がらないのは賢明でもあるもんなあ……)
それを聞いた灯夜は、この2つの考えが衝突していた。
『私からしたらどっちもどっちだなー』
「え?」
『だってさ。あるちゃんは『怖い』って言っただけで、お話したいって言われてるのに答えてないでしょ? だからどうしたいかも言ってないし』
「確かに……」
『でもさ、それなのに彼も彼で勝手にあっさりさよならなのか聞いてるじゃん。だからどっちもどっち』
「……そっか。どうしよう?」
『それはあるちゃんが決めることだと思うな。ただ1つアドバイスするなら、あるちゃんが後悔しない選択が一番だよ!』
「後悔……」
後悔についてあるては考えてみる。もう一度だけ話をしてみるか、それともここで関係を終わらせるか……。
「――あっ」
『あるちゃん?』
「私、気付いちゃった。私にとって一番の後悔って何か」
『……なんだろ?』
「ぴよが教えてくれたんだよ? 私、すぐ逃げちゃう。それが多分、私にとって一番の……。だから逃げないで頑張ってみる。アイツに……もう1回会ってみようと思う」
『おー! その意気だよあるちゃん!』
「ぴよのお蔭だよ。通話切ったら会う方向で返信する」
『あ、それならもう切るよ。あまり待たせても悪いと思うし』
「そう? まあ時間も時間だしそうしよっか。……ありがとね、ぴよ」
『いいのいいの。それじゃ、おやす――』
「あ、明日チョップ覚悟するように」
『うわーん! このまま逃げ切れると思ったのにぃー!』
灯夜の嘆きを最後に通話が終わった。そしてそのまま、あるては手にしていたスマートフォンと向き合う。
あるて
私としたことが、会うか会わないか言わず会話を成り立たせていませんでした。すみません。
怖い……ですが、もう一度お話したいです。このまま別れたら、多分長いこと後悔してしまうかもしれないので。
今後のことはその時に決めませんか?
(だからはっや!)
送った瞬間、またもやすぐに既読が付いた。恐らく気が気でならず、すぐスマートフォンを見れる構えを取っていたのだろう。
しじみ
謝らなくても大丈夫ですよ
そして良かったです。そうですね、その時に決めましょう
では何時にしましょうか? こちらは次の土曜日が一日空いてます
あるて
私も土曜日は空いてます。午前と午後はどっちにしましょうか?
しじみ
午前10時に
あるて
あの街外れの公園ですね。わかりました。当日はよろしくお願いします。
それではおやすみなさい。
しじみ
こちらこそお願いします。おやすみなさい
「ふぅ……」
待ち合わせの日時も決まったところで道瑠とのやり取りを終わらせ、あるては一息つく。
「甘やかさないとか言っておきながら、充分甘やかしてくれるんだよなぁ……。でも、いつまでもぴよに甘やかされっぱなしも良くないな」
小さく独り言を言うあるては、再びタブレットとペンを手にする。
「……寝る前に、もう少しやるか」
翌日。
「おっはよーあるちゃん!」
あるてが教室の席に座りぼんやりしていると、後から登校してきた灯夜があるての傍にやって来た。その頭はいつものツインテールではなく下ろしていて、割れ目へのチョップの対策を取っていた。
「おはようコノヤロウ」
しかしあるてはお構いなく、灯夜の脳天を小突くように軽くチョップをかましたのだった。
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