第1章 12 「強いな、兄さんは。羨ましい」
――――――。
「――話はわかりました。最低ですね、貴方」
「ぐうの音も出ないや……」
話を一通り聞いた灯夜の第一声は、火の玉ストレートと言えるような言葉だった。
「どうしてあるちゃ――あるてさんが気になったのかも知りたい所ですが……今これ以上詮索するともっと胸糞悪くなりそうなのでやめておきます。はぁあ……」
まるで毒ガスを抜くかのように、灯夜が大きく溜息をつく。
「取り敢えず、二度とあるてさんの前に姿を現さないでください。私の前にも――」
「あの、平木さん!」
踵を返そうとした灯夜の腕を道瑠が掴む。
「!? 何ですか!? もう用は無いんですけどってか、離して下さい! 刑法第176条で訴えますよ!」
「あっ、ごめん……。その、あるてさんにも話を聞いてみて欲しい。僕の話と照らし合わせて、もしも僕が嘘をついていたら……その時は潔く消えます」
「それは、もう一度私と会ってくれ……ってことでしょうか?」
「そうなるね。あるてさんが、その、何て言ったか……」
「ほう」
道瑠と灯夜の話を傍聴していた御影が何かを察したように、一言声を出した。
「僕からもお願いだ、もう一度道瑠くんと会ってやって欲しい。何ったってこの正義のヒーローの、最低な弟なんだ。今話を聞いた限りで全てを信用するのかい?」
「それは……」
「それよりもあるてさんの方が、君にとっちゃずーっと信用出来るんでない? で、照らし合わせた結果がどうだったのか。連絡先を交換するワケでも無いんだし、会って話す他、道瑠くんの今後を決める術は無いよね」
「………………」
御影のフォローを聞いた灯夜は、無言で考える。
「……お兄さんが言うと胡散臭いです。でも一理あるのが悔しいんですよね。嫌ですけど、わかりました。嫌ですけど」
「有難う」
明らかに棘のある灯夜の言葉だったが、道瑠はそんなことはどうでも良く率直に感謝を伝える。そのまっすぐさが僅かに灯夜の心を刺激する。
「ぅ……。ただ、あるてさんは私と違って優しいので、道瑠さんを庇うような言い方をするかもしれません。期待はしないで下さい」
「うん、大丈夫。じゃあ
最後に再び会う日程を相談し、結果、明後日の夕方に街外れの
「あ、そうだ。道瑠さん、1つ良いですか?」
「……色々と有難う」
道瑠と御影は横に並び、帰路を歩く。ハーフアップだった道瑠の髪にヘアゴムは無く、下ろされていた。
「うん? 何が?」
「兄さんがいなかったら、多分僕平木さんにずっと押されっぱなしだったと思うから……」
「なぁに、僕はただヒーローの役目を果たしたまで。それに楽しかったしねぇ」
「強いな、兄さんは。羨ましい」
「不器用だからねー道瑠くんは。この器用さ、半分道瑠くんに残して生まれていたらどんなに良かったコトか」
道瑠にとって御影には持っていないモノを沢山持っていて、それらを欲しがらなかった時は
「時に道瑠くん。明後日彼女に会う時なんだが、1つ良いコトを教えてあげよう」
「え?」
御影のその『良いコト』が
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