第二話 その命、貰い受ける
戦いは進んでいき、ついに白河ヨージと小鷹千尋だけになった。観客の興奮はピークに達していた。
会場の中央には白河ヨージと小鷹千尋が立っていた。
「白河ヨージと小鷹千尋の東日本対決だ!」
「男は殺して、女はイカしたんで良いんじゃないか〜?」
「俺は男でも良いぞ〜」
すると、天を刺すような一発の銃声が、それらを止めた。
「静かに! これより、主催者である
観客席で一番立派な席の右隣にいる男が言う。その席から男が立つ。
その男は白髪だらけの髪を後ろへ一つにして束ねていた。彼が
「白河ヨージと小鷹千尋だったな! よくここまで戦った! 勝った方には褒美があるぞ、敗者には変わらず与えられるのは死だ! だが、これまでの功績を讃えて平等に何かを言い残す権利をやろう!」
すると、白河ヨージが先に口を開いた。
「ある男の命を貰い受けたい、褒美はそれで良い……」
そう言って、ヨージは口を閉ざした。次は千尋が口を開いた。
「同じく、私もある男の命を貰い受けたい」
千尋もそれで口を閉ざした。
「……お互い、妙なことを言うな」
観客の一人が呟く。
「分かった、詳しい話は勝った後に聞こう! では始めたまえ!」
竹光がそういうと二人は距離をとった。また観客席がざわつく。今度の内容は勝負の行方と展望についてだった。
「なぁ、遠距離のヨージと近距離の千尋ならどっちが勝つと思う?」
「そりゃあ、遠距離のヨージだろ、あの包帯の右腕は虎の子の大砲か何かだろう……」
「だな、千尋も斧以外の何かがありそうだが想像つかんな……」
すると、ヨージの左腕がマシンキャノンに変わり、千尋の方へ伸ばした。対して、千尋は左手に斧を持ち、身構えた。
ヨージのマシンキャノンの砲塔が回転する。千尋は銃口から避けるように右へ回るように走り出した。
砲塔から轟音と共に銃弾が放たれるが千尋は着弾点を予測し、動く。千尋が動いた後に弾が地面にめり込んでいく。
すると、千尋が距離を詰めていく。すぐにヨージが千尋の顔へ向けたが砲塔は回転するだけで弾が出なかった。
「しまった!」
ヨージが思わず、漏らした。千尋は斧をヨージの顔へ振り下ろす。
「もらった!」
千尋は勝利を確信し、呟いた。しかし、ヨージは右腕で斧を防いだ。大きな音と共に斧の刃が割れ、そのまま突き刺さった。構わず切り落とそうとしたがびくともしなかった。
「なんて、頑丈な右腕なんだ!」
観客の一人が叫んだ。
すぐに千尋は右手でヨージの顔を殴ろうとしたが、ヨージは左手で受け止めて、握り潰すように力を入れる。
今度はヨージが後ろに大きく仰け反り、千尋に頭突きをする。ゴチッと鈍い音がした。
しかし、千尋は離れようとしない。ヨージはもう一発かまそうとまた後ろに仰け反ると左腕の感覚が無くなった。
後ろの方に何かが飛んでいく音がする。更にヨージの左で何かが落ちる音がした。
なんと、ヨージの左腕が切り落とされていた。
「どうやって⁉︎」
観客席がざわついた。しかし、すぐに答えが分かった。斧がヨージの遥か後ろの方で落ちていたのだった。
観客やヨージには見えなかったが、千尋の右肩から斧が飛び出して、ヨージの左腕を切り裂いたのだった。
「これは決まったな!」
「あの距離じゃ大砲は使えないな!」
観客席からは勝負が決まったと思っていた。しかし、ヨージは両足から火が吹かせ、千尋と共に観客席へ飛んでいった。
「今ので、勝負は決まった! 悪あがきはよせ!」
千尋は叫んだ。
「勝負はまだついてない!」
ヨージも負けじと叫んだ。
「いやいや、ついたでしょ! 約束が違う‼︎」
「一体、なんのことかな?」
ヨージは右口角を吊り上げながら呟いた。
「だから! 私が勝ったら……」
何かを言いかけたが千尋は腕を離してしまい、地面に叩きつけられた。
ヨージは右腕を引いた。両足のブースターが青い炎になったと思うと右腕を突き出した。
風圧でボロボロになった包帯が風に舞うとそれが露わになった。
それは赤茶けた金属で出来た右腕が開いたと思えば、右腕が左右に分かれた。更に、無数の小さな金属のチップが湧き出て来た。
すぐにそれらは繋ぎ合わさっていき、一つの金属で出来た杭が現れた。
「元東日本サイボーグ第三研究所所長黒岩竹光! その命、白河ヨージが貰い受ける‼︎」
ヨージが叫んだ。竹光にヨージの声が届く頃には杭が腹部に突き刺さっていた。
更に轟音と共に杭を打ち込むとその衝撃で竹光の体がバラバラになり、その周りも吹き飛んでしまった。
ヨージの右腕もその反動でちぎり飛び、天に舞った。
千尋はそれを見て、ため息をついた。右手から金属チップが繋がり、スマートフォンのようになった。
「……こちら、東日本残党狩り班、小鷹千尋……白河ヨージ班長が目標を処理……これより帰投します……」
スクラッパーカーニバル 絶飩XAYZ@広島文フリ @ZTON-XAYZ
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます