おじさんとおばさん

すまほらいとにん

第1話

私がまだ小さい頃、家におじさんとおばさんがいました。

お母さんとお父さんは仕事で家にいないことも多かったからおじさんやおばさんと遊んでもらったりすることが多かったです。

家には家族団欒ってものはあんまり縁がなかったし、それでもちょっとお母さんとお父さんは仲が良さそうだったから不安に感じることもなかったと思います。



たまにみんなが家にいるときは近くのサイゼリアに行きました。

私はグリーンピースに卵がついてる料理が好きで真っ先に頼んでいました。

おじさんは「コスパ最強だからな」と言っていつもミラノ風ドリアでした。

おばさんはワインとピザを食べながら「こういうお店でもお洒落に頼まないとダメなの」って言ってたのをよく覚えています。

お母さんとお父さんはいつも揃って目玉焼きがついたハンバーグでした。お父さんはハンバーグを半分、お母さんは目玉焼きを半分、毎回私にくれました。

「これでお父さんとお母さんと一緒だなぁ」

そう、お父さんがニコニコしながら言っていたのをサイゼリヤの看板を見ると思い出します。



おじさんはいつも家にいました。

昔は製薬会社の車を乗り回してバリバリ働いてたって聞きました。その後は近くのコンビニで長いことアルバイトをしていましたが、お店が移転するのと同時に辞めたようでした。

おじさんはYouTubeをパソコンで頑張ってみているみたいで、「あのYouTuberがやばい」とか「このチャンネル最近再生数落ちてるしもうオワコンだな」ってよく言ってました。

これからはYouTubeで一発当てて暮らすのが1番の勝ち組だと得意げに話してくれました。

私が学校から帰ってきておじさんとおやつを食べるときには、次はこういう動画が流行るからみておいた方がよいって教えてくれました。

「おじさんはお母さんとお父さんみたいに仕事に行かないの?」

と聞いたこともありました。おじさんは普通に働くのはコスパが悪いからチャンスを待ってた方がいいんだって言ってた気がします。

おじさんは遊戯王カードを集めたり、他の人の代わりにゲームをやってお金を集めてるみたいでした。

たくさんお金が入ったと言うときは映画に連れて行ってくれました。おじさんはコーラとホットドッグ、私はポップコーンとオレンジジュースがお決まりでした。

おじさんは気に入った映画は3回も見に行くことがあり、「何回みても最高だわ、神だよ」って言ってました。

私はそんな優しいおじさんが大好きで、土曜日にお小遣いをもらった時はセブンイレブンでいちご味の10円ガムを買ってプレゼントしてました。



おばさんはスマホのアクセサリーを作る会社の広報をしていました。

おばさんは平日は帰りが遅く酔っ払って帰ってくることも多かったです。飲み直すためにコンビニで買ってきたチューハイとじゃがりこをローテーブルに広げて、その日に行った合コンの感想を「銀行勤めの男は稼ぎはいいけど話してて面白くない」とか話をしてくれました。

おばさんは私がじゃがりこのチーズ味が好きなのを知ってて少しだけ摘んで「アタシもう食べないからあげるよ」と分けてくれるのを楽しみにしていたを思い出します。

おばさんは休日に予定がたくさんあるみたいで忙しそうでした。友達と買い物に行ってから少し大きな公園でやっているフェスに行ってるみたいでした。土日の片方は家でゆっくり過ごすと決めているみたいで、YouTubeで韓流アイドルのPVを見ながら美顔器でケアをしたり自分磨きを頑張っていました。

「女はメリハリが大事なのよ、オンオフをしっかり切り替えられる方が肌にもいいの」

おばさんはいい女性になるために必要なことを色々教えてくれました。中にはよくわからないものもありましたが、「年齢を重ねるごとに女性らしさが出てくるものだから、結婚とかそういうのは焦っちゃいけないの」という言葉はよく覚えています。

おばさんはそんな女性らしさをたくさん遊んでたくさん恋して育てているんだなって思いました。



おじさんとおばさんにはもう何年も会っていません。

お父さんとお母さんが交通事故で亡くなった時に私は祖母に引き取られ東北の方へ引っ越しました。おじさんとおばさんは家を出ていかなければならなくなりました。

おじさんは友達に何かを頼み込んだりしてました。

おばさんは彼氏と電話で揉めていました。

2人にさよならを言うタイミングもありませんでした。

私も祖母の知り合いの紹介で出会った方と結婚し、あの時のおじさんとおばさんと同じくらいの歳になりました。

今2人はどうしているのだろう、元気にしているのか。

そう、ふと思うのです。

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おじさんとおばさん すまほらいとにん @sumaholightnin

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