テスト_小説

引籠 眠

第1話 あまりに衝動的すぎる犯行動機

昔から妄想が好きだった。


超能力を使って暗黒集団と熾烈なバトルを繰り広げたり、教室に入ってきた不審者を軽やかに撃退したり…勉強が苦手な私にとって授業中の暇つぶしは脳内での異能バトルだった。あぁ、私も急に由緒ある巫女の家系だったことが判明したりしないかしら。

「まぁでも中二はそんな時期だって聞くし、自分もこんな妄想馬鹿らしいと思う日が来るんだろうなぁ」


…そんな暗黒の時代開幕から永い時が経過した。未だに私は漆黒の空間を彷徨い続けている。

何故だろう、中二を脱しても厨二を引きずっている。馬鹿と厨二に付ける薬はないということだろうか。妄想が…妄想が溢れ出て止まらない…!

いい年こいた一般人が魔眼で妖を滅する妄想をしているなんて、流石にまずいとは思っている。小説家でもゲームのシナリオライターでもないのに、あまりに低クオリティすぎる「ぼくがかんがえたさいきょうのわざ」が日々誕生していく。


普通なら大人になるにつれてそのような習性は捨て去っていくのだろう。しかし私は、それを心の内に秘めておくことができなかった。どんなにありきたりだろうが、文章が下手くそだろうが、生まれたアイデアを放置するなんてもったいないじゃないか。言葉は見られてこそ、その存在と価値が立証されるのだ。



本当は自分の考えたストーリーを皆に読んでもらったり、自分の考えたゲームで遊んでもらったり…そういう仕事がしたかった。でもそんな夢みたいな仕事、私にできるのだろうか。

「生活していくために安定した就職を」「親を安心させられる進路へ」「そんな才能ないし」…色々なことを言い訳にして、自分の成績で行ける総合大学に入って、学部での学びが活かせそうな職場に。好きなことに当たって砕ける勇気がなかっただけだということには気付かないふりをしていた。その間にも周りの人達は好きなことで輝かしい成果を残し続けていた。


今まで私が妄想を妄想で終わらせていたのは、自分から誰かに見て、聞いてもらうための行動をしなかったからだ。自分の願望に反して「妄想だけをする人間」であり続けて、「やりたいことをやる自分」さえも妄想にしている。



…そうだ。何もやらないで年をとっていくよりは、何かやってみて後悔した方がいい。どうせ引籠ってばかりで趣味もないのだから、余暇は妄想に費やしてみるのも悪くない。評価されなくても、鼻で笑われても、自分がやりたいことを少しでも実現できたことには変わりない。生まれ持った飽き性と唐突に発生した好奇心、どちらが勝つか非常に楽しみだ。


手始めに小説投稿サイトに登録してみた。段階を飛ばしすぎな気もしたが、むしろこのくらいがちょうど良いのかもしれない。素人でも動画投稿ができる時代だ。良い世の中である。

今までにこのようなサイトには立ち入ったことがないので勝手がさっぱりだ。見る物全てが新鮮で不可解で、いきなり知らない街に飛ばされたような気分。


今夜は遅いので一旦寝て、また後日ここに来てみよう。次はとりあえず他の投稿者様の作品を拝見させていただいて、サイトについての把握を試みようと考えた。

普段なら無意味な明け方の夢も今日からは物語になるかもしれないという期待が、カーテンを微かに揺らしていた。

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