宝探し
すまほらいとにん
第1話
部室を出て建物前の喫煙所で一服しながらこの後何をしようか考えるのが放課後の楽しみだ。
いつぞやの文化祭の時にアイツと一服して仲良くなったのも懐かしい。強めのメンソールで少しむせたが、平然を装い出発する。今日もカードショップに寄っていこう。
横断歩道をそさくさと渡り、坂を降りると向かいの通りのファミマがファミチキを買えとささやく。いや、絶対買わねえ。
ファミチキを買う金でストレージのカード何枚買えると思ってるんだと心の中で突っ込みながら、今日は誰かストレージ漁ってるかなと考える。
カードショップでアイツらと鉢合わせるのは珍しいことではなかった。僕らは浮ついた顔で大学の授業を受けながら次の「決闘」のことで頭がいっぱいなのだ。
「決闘」で大事なのは個性のあるデッキを使うことだった。強ければ楽しいわけでもない、漫画のようなキャラ付けが僕らの関係を色付けしていた。だから僕もアイツらも個性を獲得するために浮ついた顔で考えたパーツを日々探すことに熱中していた。まるで宝を探して海を駆け巡る海賊のように。
カードショップに着く前に近くの自販機でカルピスソーダを買う。100円で500mlなのはこいつとマウンテンデューだけだ。集まったメンツでこいつを買うのもお決まりだ。
裏通りに入りそこいらを歩くオタク達に自分が溶け込んだのを感じつつ、雑居ビルの奥にある階段をあれこれ期待しながら登る。
ストレージあさりは宝探しなのだ。
宝探し すまほらいとにん @sumaholightnin
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