第15話 敵のアジトで暴れました

 カンテラに火をつける。

 早速、山道へ。

 視界は良好だ。


「今回は、昨日の帰りに見つけた方から行こう。」


 村人を助けないとだもんね。

 もちろん、異論はないよ。


にゃん!


「力強い返事だ。覚悟は出来てるんだな。」


 そんなの当然だよ。

 さぁ、行こう。


 山道を進んでいく。

 別れ道の前に出た。

 進むのは坂が急な方だ。


「確かこの辺に落ちてきたんだったな。」


 昨日、落っこちた所だ。

 この手すりが無かったらどうなってたか。

 

 そこから更に進んで上を目指す。

 方向的に考えてこの上にあるのは確かだ。


「にゃんすけ。あれ。」


 フィーが、急にぼそりと呟いた。

 曲がった先を見ると、ちらりと一匹のゴブリンが見える。


 警備かな。

 でも、結構危険な場所にいるね。

 落ちたら危ないよね。

 だよね?


にゃん。


 爪を立てて、壁を登る。

 ゆっくりと横に移動する。

 そして、ゴブリンの後ろに降りた。


 予想通り。

 後ろががら空きだよっ。


にゃ!


ふぎゃっ!?


 背中を蹴り飛ばすと前に飛んだ。

 しかし、前に地面はない。

 柵の上を抜けて、そのまま坂を滑っていった。


ふぎゃああっ!


 ぐしゃりって音した?

 見ない方が良いかな。

 見えるというのも大変だね。


「意外にエグいな。私達も気を付けよう。」


 そうだね。

 落ちたら大変なのは自分達も同じだし。


 更に上がって、行き止まりに行き着く。

 目的の場所についたようだ。

 建物が沢山見える。

 その前には二匹の門番がいる。


 横穴とは反対の場所かな。

 両側に出入り口があるんだね。


「ついたな。準備は良いか?」


にゃん。


 いつでも良いよ。

 何匹でもやってやる。


「やるぞっ。」


にゃっ。


 門番を蹴飛ばして村の中央に吹き飛ばす。

 それにより、周囲のゴブリンが気付いた。

 しかし、俺達は既に目の前へ。


にゃん。


 俺は、二匹の真ん中を駆け抜けた。

 二匹のゴブリンが、視線で追いかける。

 次の瞬間、二匹の首が切れた。


 あ、どうも。

 ちょっと通りますよ。

 

 俺は、ゴブリン達の視線を引き付けていく。

 その間に、フィーが斬っていく。

 斬った数は、十を越えるだろうか。

 相手は、斬られた事に気付く間もなく死んでいく。


「次、果樹園に突っ込む。数が多いから気を付けろっ。」


にゃん。


 分かってるよ。

 そっちこそ、樹に長包丁をぶつけないでね。

 ・・・ぶつけそう。


 果樹園に突撃する。

 見つけた敵を樹に向かって蹴り飛ばす。

 跳ね返った所を、フィーが斬る。


 今度は二匹。

 片方ずつでっ。


 近い方のゴブリンにポイントダッシュ。

 そいつをフィーが斬る。

 もう片方に、そのまま飛び込んで蹴り飛ばす。

 その勢いで、後ろに一回転。

 その下を潜ったフィーが、跳ね返ったゴブリンを斬る。

 

ふぎゃあああああっ。


 見つかった。

 周りから沢山来たぞっ。


「来いっ!」


 フィーが、後ろへ下がる。

 それをゴブリンが追いかける。

 樹が邪魔で、ゴブリンが一列に。

 次の瞬間、前に出て長包丁を付きだした。


「はっ!」


 面白いようにゴブリンが刺さっていく。

 更に押し込んで、その数を増やす。


「てやっ!」


 前にいるのを蹴って、長包丁を引き抜いた。

 ゴブリンの列は、そのまま前に倒れる。


ふぎゃっ。


にゃん!


 周りから来てるよっ。

 馬鹿正直に。


「分かってる。前を頼む。」


 知ってたか。

 お任せあれ。


 開いた真ん中を抜ける。

 少なからずいたゴブリンを、ポイントダッシュで蹴飛ばしながら進んでいく。

 後ろから、ゴブリンの群れが追いかけて来る。


「こっちだっ。」


 フィーが、方向転換。

 向かう先には、崖がある。

 ゴブリン達も後に続く。


 崖? なるほどっ!


「いっせーのっ。」


にゃっ。


 ここでジャンプ。

 フィーと別れて左右へ。

 その間を、ゴブリン達が駆け抜ける。


 そのまま下へごあんなーい。

 って、何匹か耐えたか。

 ご遠慮なさらずにっ。


 蹴飛ばして残りも落っことす。

 下からは、阿鼻叫喚が聞こえてくる。

 そして、カンテラをつけたフィーと合流。


「まだ来るぞっ。」


 更に追加のゴブリンが来る。

 でも、こっちに来ないで様子を見ている。


「いるな。」


にゃん。


 昨日会った、リーダー格のゴブリンだ。

 ゴブリン達の頭が良いのは、どこかから指示を出しているからだね。


「にゃんすけ。まだ、行けるか?」


 にゃん。


 まだまだ行けるよ。

 元気いっぱい。


「よし。行こう。」


にゃっ。


 俺とフィーは、駆け出した。

 向かう先は、真っ直ぐ。


「まずは、目の前のゴブリンを。」


にゃっ。 


 その通りっ。

 来ないならこっちからだっ。

 

 真正面のゴブリンを蹴り飛ばす。

 後ろにいたゴブリンが現れる。

 その二匹にポイントダッシュ。

 さらに、蹴飛ばしたばかりの奴の顔を踏んでジャンプ。

 その三匹をフィーが斬る。


「次っ。」


 地面に着地して次のポイントダッシュに繋げる。

 地面から目の前の一匹のお腹へ。

 蹴り飛ばして、後ろの四匹にぶつける。

 散らばった所をフィーが斬る。


「上手く倒せてはいるが。」


 きりがない。

 しかも、統率が取れているのか周りに展開されている。

 なら、次のターゲットは一つ。


にゃん。


 フィーを呼んでポイントダッシュ。

 樹を蹴って、フィーへと飛んだ。


「任せろっ!」


 鞘を取り外したフィーは、後ろに構える。

 そこに着地して、ポイントダッシュ。

 フィーの振り上げに合わせて大ジャンプ。


 奴はどこだ。

 いたっ。真正面だ。

 少し高い所で見下ろしている。

 なるほど、常にこっちを見てないと指示が出せないもんね。


にゃん!


 もう一度、フィーを呼ぶ。

 すると、同じ体制に構えた。


「よし。来いっ。」


 再び鞘へ。

 今度は鞘を振り下ろす。

 角度調整はこっちで。


「はぁっ!」


 丁度良いタイミングでジャンプ。

 そこから真っ直ぐ飛ぶ。

 狙いは、リーダー格のゴブリン。


にゃっ!


ふぎゃっ。


 ドロップキックを食らわせる。

 後ろへ飛んだリーダーゴブリンは、壁に衝突。

 頭を強く打って命を落とす。


にゃっ。


「やった。後は雑魚だっ。」

「やるじゃねぇか。てめぇら。」

「なっ。」


 高い所から、被り物をしたゴブリンが降ってきた。

 着地と同時に、短剣を抜いた。


「実験だったとはいえ、充分知能を注ぎ込んだはずなんだがな。」

「貴様らの目的は何だ。」

「目的? もちろん、大蛇様と共に世界を征服する。その為にも贄が必要なんだよっ。」


 被り物のゴブリンが、短剣で突いてくる。

 それを、フィーが鞘で防いでいく。

 一つの攻撃は弱い。でも。


「はっ。」

「おせぇ。」


 隙をついたフィーの攻撃は当たらない。

 相手は素早いため、かわすのは簡単なのだ。


「村人を拐ったのは、大蛇に捧げるためかっ。」

「もちろんそうだが、したっぱの食いぶちを作らせる為でもある。村人どもめ、協力したら許してやるっつったら、大人しく言う事を聞いてくれてな。」


 フィーは、短剣の攻撃をさばいている。

 でも、こっちの攻撃は当たらない。

 しかも、思うように長包丁を振れない。


「はっ。狭い所に誘導してやったのに気付いたか?」

「くっ、ならばっ。」


 果樹園を抜けるべく走り出した。

 建物がある広場の方が戦えるのだ。


「させねぇよっ。お前らっ!」


 広場への道をゴブリンが塞ぐ。

 フィーが、立ち止まった。


「ちぃっ!」

「無駄なんだよっ!」


 被り物のゴブリンが、フィーに突撃する。

 それに対して、被り物のゴブリンを目指して突き刺した。


「無駄だっ。全部見てたんだよっ!」


 下に滑り込んで回避。

 短剣がフィーに迫るが。


「それは、どうかなっ。」

「は?」


 短剣が空を切った。

 フィーが、下にかわされたと同時に後ろに倒れていたのだ。


「にゃんすけ、頼んだぞ!」


にゃ!


 任せてっ!


 フィーが構えた鞘に着地する。

 それを蹴って、被り物のゴブリンの顎にドロップキック。


「しまっ。」


 顎に直撃して吹き飛んだ。

 短剣も、手から離れて空へ。

 それでもまだ立ち上がる。


 さすがに威力が弱かったか。

 でもまだ終わりじゃない。

 樹を蹴ってジャンプ。

 空に飛んだ短剣をくわえて落下。


「まだ短剣ならあ・・・。」


 最後まで言う前に言葉が止まる。

 俺がくわえた短剣が、喉を突き刺したからだ。


 残念だったね。

 これで終わりだよ。


「なぜ、我らは、完璧な。」


 言い切る前に絶命した。

 倒れると共に、俺は離れる。


「はぁ、どうなる事かと。にゃんすけのお陰だな。」

 

 俺が言いたい事は一つ。

 これに懲りたら、短い剣を持ちなさい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る