第14話 双子と交流しました

「あの。起きてください。」

「起きてくださーい。」


 何事? あぁ、朝か。

 分かんないけど。

 だって外、霧だし。


 起き上がって、あくびをする。

 眠い。

 でも、疲れはない。


「ふぁー。」


 フィーも起きたようだ。

 起き上がってあくび。


 昨日、しんどそうだったけど大丈夫かな。

 どれぐらい寝たら魔力って全快するのかな。

 あっ、ご飯の匂いだ。


「ようやく起きましたね。おはようございます。ご飯持ってきましたよ。」

「冷めないうちに食べてくださいね。」

「うむ。ありがとう。」


 立ち上がって机の前へ。

 既に、ご飯の準備は出来ている。

 献立は昨日と同じ。

 いや、お米に入っている。


 焼き魚だ。

 ありがたい。

 いただきまーす。


「じゃあ、いただこう。」


 勢い良くかじりつく。

 ご飯が空腹に染みていく。

 後は、ゆっくり味わいながら。


「おっ。お米に何か入っている。」

「焼いた魚を、ほぐしたものです。」

「頑張って握りました。」


 二人で作ってるんだ。

 って事は、二人の親もつれていかれたのか。


「そうか。最近作り始めたのか?」

「はい。親の手伝いをしてたので何とか作れてます。」

「見よう見まねですが。」


 それでも、毎日作れているのは凄いよね。

 しかも、俺達の分まで。

 ありがたい。


「充分立派だよ。頑張ったな。」

「いえ、そんな。でも、ありがとうございます。」

「ありがとうございます。」


 二人並んでお辞儀。

 照れているのか顔が少し赤い。


「あっ、お口にお米がついてる。」

「本当だ。」


 あっ、いつの間に。

 お恥ずかしい。


「取りますね。」


 口についたお米を取ってくれた。

 ついでに布を取り出して、口の周りを拭いてくれる。


「綺麗な布だな。」

「はい。前の誕生日に、お母さんが私達姉妹にくれたんです。」

「大切な物なんだな。」

「はい。」


 そんな物で拭いてくれたの?

 なんか申し訳ない。


 心の中で謝りつつも最後の一口。

 心もお腹も満足。

 ごちそうさまでした。


「ふぅ、食べ終わった。美味しかったよ。」

「ありがとうございます。お下げしますね。」

「また、美味しく作りますね。」


 台を持って扉へ。

 しかし、外に出ない。

 そして、何か不安そうに振り向いた。


「どうしたんだ?」

「えぇと、その。あなたがよければで良いんですが。」

「昨日話し合ったんですが、村を案内しようかなって。」

「案内か。分かった、頼もう。」


 フィーは、少し悩んで答えた。

 行くんだ。

 まぁ、する事もないし良いけど。


「ほんとですか?」 

「それじゃあ、後で迎えに来ますね。」

「あぁ。また後で。」


 二人は、家を出た。

 そして、嬉しそうに歩いていった。

 フィーが扉を閉めて中に戻る。


「にゃんすけ。やはり、あの二人の親は。」


にゃん。


 だろうね。

 連れ去られたんだと思う。

 死んではないと思うけど。


「あの子達、ほとんど笑わなかった。親がいなくなったのが堪えているらしいな。何とかして会わしてやりたいけど。」


 そうだね。

 そうなると助けないといけない。

 でも、それが無理だから困ってるんだけどね。


「まずは、あの子達に元気になってもらうのが先かな。」


 考えが行き詰まったし良いかもね。

 もしかして、その為に一緒に行くって?

 

「二人が誘って来たということは、彼女達も寂しいのは嫌って思っているって事だからな。」 

 なら、するべき事は決まりだね。

 あの二人を笑わせる。


 目的が決まった所で、外からドタドタと。

 誰かが走ってくる。

 その足音は、家の前で止まった。


「おねぇさん来たよ。」

「来たよ。」

「ふふっ。今行こう。」


 フィーと俺は外へ。

 扉を開けると、二人が待っていた。

 どうやら、息切れをしているようだ。


「そんなに急がなくても、何処にも行かないさ。」

「早く一緒に行きたくて。」

「くて。」

「分かった。ほら、深呼吸。」


 二人は深呼吸して息を整える。

 そうとう早く走ったのだろう。


 可愛いところがあるね。

 いや、こっちの姿の方が年相応なのか。

 じゃあ、なおさら笑わせなくっちゃね。

 

「ご、ごめんなさい。取り乱しました。」

「おかげで、落ち着けました。」

「そうか、良かった。じゃあ、行こう。」


 行っちゃいましょー。


 二人に連れられて町の中心に向かう。

 そこには食材売り場や、食事を提供するお店がある。

 でも、閉まってる。


「よくここで買い物をしているんだよ。」

「良く、おやつを買ってくれたんだ。」

「そうか。どんな食べ物なんだ?」

「お米を潰して甘い粉を混ぜたやつ。」

「うにょーんって。」


 お餅かな。

 確かに、食べたお米は粘りがあったような。

 甘い粉の方は分かんないけど。


「あれ、君、興味あるの?」


 じっと見てただけだけど。

 まぁ、興味はあるかな。


「えーと。そういえば、おねぇさん達の名前って聞いてなかったね。」

「確かにな。私はフィーでこの子がにゃんすけだ。」

「私は、エナだよ。でこっちが。」

「ネアだよ。双子なんだ。」


 双子か。

 言われてみればそっくりだね。

 髪型が違うから分からなかったのかな


「にゃんすけって、甘いもの食べれるの?」


にゃあ?


 どうなんだろ。

 まだこの体が猫と同じか分からないし。


「どうだろう。でも、人間と同じ物食べてるからなぁ。」

「そうなんだ。不思議だねぇ」

「だねぇ。」


 本当に不思議だね。

 いつか判明したら良いんだけど。


「じゃあ、次に行くよ。」

「こっち。」


 二人がフィーの袖を引っ張って走り出した。

 フィーが慌てて二人に合わせる。

 もちろん、俺も合わせて走る。

 段々、素が出てきたようだ。


「次はここ。」

「勉強教えてくれる所。」


 学校?

 そのわりに小さい。

 寺小屋的な感じだ。


「勘定の仕方とか教えてくれるよ。」

「あと、読み書きも。」


 基本的に、商売に必要な物を習うのか。

 漁業の村と取引してるもんね。この村。


「私達、結構成績が良いんだよ?」

「優秀な商人になれるって。」

「そうか。今はやってないのか?」

「先生、もういないから。」

「いないから、やってない。」


 ここもか。

 優秀な人材は、軒並み連れ去られたんだな。


「そうだ。フィーおねぇちゃんが教えてよ。」

「それいいね。出来るよね?」

「まぁ、商売に必要な物ぐらいなら。」

「やったね。」

「やったよ。」


 そんなに嬉しいものなの?

 面倒な物な記憶しかないけど。


「にゃんすけも一緒にやろうね。」

「一緒にね。」


にゃん。


 仕方ないか。

 簡単なやつだけね。

 簡単なやつだけ。

 

「じゃあ、次は。」

「次は。」


 次に行く所を考えている。

 いっぱいあるのかな。


「おや、使いの人。」

「やぁ、村長さん。で、いいんだっけか。」

「いかにも。それで、使いの人は何を?」

「この二人に村の案内を受けている所だ。」

「そうか。何もない所じゃが、楽しんでくれ。」


 楽しんでますとも。

 双子も笑ってくれてるし。


「あっ、村長さんだ。こんにちは。」

「こんにちは。」


 今、気付いたんだ。

 どれだけ悩んでたんだ。


「こんにちは。しっかり、使いの人を案内するんじゃよ?」

「はい。がんばります。」

「がんばります。」

「・・・っ。そうか、頼もしいのぉ。ほっほっ。」


 村長が急に笑いだした。

 さっきまで、暗い顔をしてたのに。


「そうじゃ。わしの家で団子でも作らないか?」

「だんご?」

「美味しいの?」

「あぁ、美味しいぞ。使いの人もどうじゃ?」

「良いのか?」

「あぁ、へそくりの材料があるんじゃ。」


 へそくりねぇ。

 こっちだと、お金以外も貯めるんだね。

 まぁ、お金より食べ物の方が大事そうだからね。


「じゃあ、早速行こう。」

「行こう。」


 行こうっ。

 久しぶりの甘いものだ。

 分かんないけど。


 村長の家は広場の近く。

 歩いてすぐだ。

 少し歩くと、扉の開いた家が。

 ついたと同時に中に入る。


「あら、じいさん。どうしたの。」

「この子達とお団子を作る事にしたんじゃ。」

「そう、ね。最後だもんね。手伝うわ。」

「あぁ、頼む。」


 村長の奥さん? が、材料を取りに行った。

 その間に、準備を済ます。

 双子が手を洗う。


「料理する時はちゃんと洗わなきゃね。」

「ね。」

「そうだな。」


 フィーも手を洗う。

 もちろん俺も。


「ほっほ。じゃあ、最後はワシじゃな。」


 全員、手を洗って準備完了。

 それと同時に、村長の奥さんが材料を持ってきた。


「じいさん。準備お願い。」

「あぁ。」


 机の上に木の鉢を置いてその中に、複数の粉をいれていく。

 それを、皆に配っていく。


「やる事は簡単じゃ。とにかく粉をこねて丸めていくんじゃ。」

 

 言われた通りにこねていく。

 だんだん、固まりになってきた。


「気持ちいいね。」

「ね。」

「確かに、何とも言えない気持ち良さが。」


 生地は柔らかく、こねてる時にかかる弾力が気持ち良い。

 それをすくって、丸めていく。


 肉球だけど、何とか行けそう。

 結構、慎重にしないといけないけど。


「出来た。」

「でも、沢山。」

「そうじゃな、いっそのこと村の皆に配るかのぅ。」

「でも、それだと足りなくなるんじゃ。」

「そうだね。」

「なに。材料ならいっぱいある。」


 確かに、まだまだいっぱいの粉が。

 でも、沢山作るのは大変じゃない?


「ふふ。なら、競争だな。誰が一番作れるか。」

「いいねそれ。」

「負けないよっ。」


 フィーが粉をつかんで鉢の中へ。


「あっ。そんなに勢い良く入れたらっ。」


 粉が舞ってフィーの顔に。

 その結果、顔が真っ白に。


「ふふっ。変な顔。」

「ほんとだっ。」


 その場に笑い声が聞こえる。

 フィーも笑う。


 ポンコツもたまには役に立つもんだ。

 あっ、でも普段はやめてね。

 言っても無駄だけど。


「なんだなんだ?」

「なにやってんだ?」


 笑い声を聞いて村人達が集まってきた。

 開けておいた扉から、覗いていく。 


「皆に配るようのだんごを作ってるんじゃ。」

「その人数じゃ大変だろ。手伝うぜ。」

「俺も。俺も。」


 村人達が家に入ってきた。狭い。

 で、沢山の人数で机を囲んでだんごを作る。


「でもこれって、配って貰うはずか、自分で作ってるんじゃ。」

「楽しいから良いじゃろ。」

「そりゃあ、そうだ。」


 再び笑い声に包まれる。

 フィーも笑っている。


「にゃんすけ。吹っ切れたよ。人数が足りないとか言ってる場合じゃないよな。」


にゃん。


 付き合うよ。

 行くんでしょ?


「人数は足りてると思うよ?」

「おだんご沢山。」


 聞かれていたようだ。


「そうだな。あっという間だ。」


 はぐらかしたようだ。


 そうだね。

 知るのは自分達だけで充分だ。


 それから、だんごを焼いて完成。

 周りの村人を呼んで、だんごパーティ。


 甘い。

 やっぱり、こっちのだんごも甘い。

 食べれるかとかどうかとか、どうでもいい。


「使いの人。今日はありがとうの。」


 村長が話しかけてきた。

 昨日とは違い笑顔だ。


「あの子達の親が連れていかれてから、塞ぎ込んでおってのぅ。久し振りに笑顔を見れた。もちろん、村の皆ものぅ。」


 確かに、皆暗かった。

 切っ掛けが必要なだけだったのかもね。


 一日中そうしていたのか、空が暗く。

 充分にだんごを堪能してお開きに。

 双子と共に帰宅。


「フィーおねぇちゃん。今日、一緒に寝ない?」

「それ、いいね。」

「ごめん今日は一緒に寝れないんだ。でも、次の日一緒に寝よう。その代わり、ご飯を一緒に食べような。」

「ほんと?」

「ほんとだよね?」

「あぁ、ほんとだ。約束だ。」


 夜、姉妹の家でご飯を食べた。

 四人で食卓を囲む。


「そういえば、今日案内しきれなかったね。」

「そうだね。」

「大丈夫だよ。明日またお願いする。」

「うん。明日また。」

「絶対ね。」


 食事を済ませて別れた。

 家は、二つ隣同士。

 以外と近かった。


 双子の家を出て歩き出す。

 目指すは、家ではなく山。


「にゃんすけ。行こう。」


にゃん。


 こうして、再び山を目指すのだった。

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