第3話 眩しい彼女
ウルマとアダが相談した結果、無事にリリアのシシカ村での修行が決まった。
と言っても、村側としては初めから断る理由などなかった。それでもリリアはこちらが恐縮してしまうほどに、何度もお礼を言っていた。
明日の朝一番で、ウルマが村のみんなにリリアのことを紹介するらしい。
きっと明日からは慌ただしい日常が訪れるのだろう。
シシカ村での修行の決定に伴い、リリアはノマの家で生活をすることとなった。
ノマが家の周辺をリリアに案内していると、こちらに向かって小柄な少女が走ってきているのが見えた。
「おにいちゃあぁぁーーーん!」
少女は遠くから声を張り上げている。そんな大声でなくても聞こえるのに。
「お兄ちゃん?」
リリアが軽く首を傾げてノマを見る。
「僕の妹のソラです。いつも騒がしいやつで……」
柵を軽々とジャンプして越えたソラは、食い気味でノマに詰め寄った。短く切り揃えられた髪の毛が勢いよく揺れる。
「とてつもなくカワイイの女の人と歩いてたってほんとうッ!?」
言いながらソラはノマの隣にいたリリアを発見する。途端に、あぁっ! と声を上げた。
「ほ、本当だぁ……!」
ソラは顔を両手で覆い、わざとらしく後ずさりした。
「眩しい……あたしには眩しすぎて直視できないよお兄ちゃん」
「え……! わ、わたし、今光ってますか?」
リリアはくるくると不安げに自分の体を見まわした。
「真面目なところも更に眩しい」
「えっ!? それって、どういう……?」
「ソラ、リリアさんが困ってるから」
このままだと変な方向に話が行きそうだったので、ノマが二人の間に入る。
「ひひ、ごめんねお兄ちゃん。お兄ちゃんにもついにカノジョが出来たんだと思うと、あたしは嬉しくて嬉しくて」
ソラは無邪気に笑う。父さんと同じようなことを言うなぁ。ノマはため息をついた。
「違うよ。リリアさんは村のお客様だから」
「そうなの?」
「はい。わたしは──」
リリアは恒例の自己紹介を終え、ソラと握手をした。
「魔法使いだって!? す、凄いや! そんなものすんごい人がこの村に来てくれるなんて!」
そう言った後、ソラは残念そうにがっくりと肩を落とした。
「あぁーリリアさんの魔法、あたしも見たかったなぁ」
「そ、そんな、見せびらかすような大層な魔法でもないですので」
リリアは恥ずかし気な様子で頬を染めた。
「でもさ、お兄ちゃんよかったね」
「何がだよ」
「ひひ」
ソラはノマの質問には答えなかった。代わりに歯を出してにこやかに笑うと、リリアをソラお気に入りの場所に案内すると言い出した。
今日はリリアも疲れているだろうし今度にしろと意見すれば、ソラは唇を尖らせた。
「ちぇー。リリアさんはどれくらい村にいる予定なの?」
ソラが尋ねれば、リリアは指先を頬にあてた。
「王からの派遣期間は一ヶ月ほどです。だいたいの魔法使いは、一ヶ月で次の試験に合格するための
「まなえなじー?」
ノマとソラが同時に呟くと、リリアは微笑んだ。
「わたしたち魔法使いは、
するとリリアは錫杖の赤い宝石を指さした。
「魔法使いが人から得た
試験に合格しないまま現在の階級以上の魔法を使えば、罰せられるらしい。
ノマから見た魔法は、夢のような能力だ。しかしそれは同時にとても危険なものとも言える。だからこそ魔法団体は厳しく取り締まっているのだろう。
「じゃあ、リリアさんの修行ってすごく大事なものなんじゃん」
ソラは真面目な顔で言った。
見知らぬ土地で人と関りを持つと共に、人助けをして他者から感謝や喜びを得なければならない。
そう簡単に出来ることではないということは、リリア自身もよくわかっているだろう。
「はい。ですがわたしは、試験に合格するためや
そしてリリアはノマに言った言葉を繰り返した。
「魔法で人助けをするのが、わたしの夢ですから」
「お兄ちゃん、リリアさんすっごくかわいい上にかっこいいよ……。お兄ちゃんにはもったいないよ」
「だから、そういうのはリリアさんに失礼だろ」
「ひひ、ごめんごめん」
けれど、リリアのことを純粋にかっこいいと思ったのは事実だった。
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