第24話 父親
大声で発言したのは、王の隣に座っていた王弟オージン・ギース・ライジニアだった。長身で細身の王弟は立ち上がり、王座の反対側に佇むルルアーナ公爵令嬢へ近づき見つめ合った。
ルルアーナは、目を潤ませている。
「愛しいルル。ルルが宿しているのは私の子供だ。」
王弟ギースは、ルルアーナを愛おしそうに抱きしめて、ギガリア公爵を睨みつけた。
「私は、ルルが身ごもっている事を知らなかった。私にも非がある。私は、ルルと我が子を何があっても守ってみせる。」
眉間に皺を寄せたギガリア公爵は、激怒し両手の拳を握りしめ、ワナワナと震えながら怒鳴った。
「私の娘はライジニア王国で最も高貴な娘だ。王妃になるべきはずの娘に庶子の貴方が手をつけるとはどういう事ですか!オージン王弟殿下!ルルアーナは将来の王妃になるはずの娘だ。オージン殿。イヤ!国王よ。責任を取ってもらいますぞ!」
真っ赤な顔で、ギガリア公爵は国王へ近づいて行った。王座の側にいた王太子グランが、義ガイア公爵を押し留める。
「ギガリア公爵!」
ギガリア公爵は、王太子グランの襟元を両手で苛立ちながら掴みかかった。
「私の娘は、王妃になるのだ。貴方が私の娘を選びさえすれば、そうでなければ私が今までしてきた事は何の為に……」
グランは、冷静にギガリア公爵へ問いかけた。
「貴方がしてきた事は許される事ではありません。娘を王妃にさせる為に沢山の金銭を使ったみたいですね。隣国との密輸や人身売買で得た金を貴族達への根回しに使用していたのでしょう。一部の貴族の証言と証拠品を手に入れています。」
ギガリア公爵は、眉間に皺を寄せ、グランの後ろにいる私を睨みつけてきた。
「まさか、お前か!出来損ないの娘!」
私は、父親に初めて娘だと告げられた。それがこんな言葉になるなんて想像していなかった。
「私は、出来損ないでも、貴方の娘でもありません。私はミラージュ・ローニャです。ギガリア公爵。」
母や私を苦しめた人間なんて父親ではない。今まで一度も父親らしいことなんてしてもらった事がない。私は、選ばれたくないと、いろんな事から逃げていた。
これからは、私が選ぶ。
私の意思で選ぶのだ。
「ギガリア公爵。貴方は罪を償った方がいいわ。私もルルアーナも、他の沢山の人達も貴方の都合のいい道具なんかじゃない。」
ギガリア公爵は、私の声に驚いたように、グランの襟から手を離し後退った。私の後ろを見て何かを恐れるかのように引きつった表情をしている。
ギガリア公爵は、急に不安げな表情でルルアーナを見て手を伸ばす。
「ルルアーナ。愛おしい娘よ。お前は父を助けてくれるだろう。王族に連なるのならば、結婚を許してやろう。だから‥‥‥」
王弟に抱きしめられた状態のルルアーナは、冷たい目線でギガリア公爵を見て被りを振った。
ギガリア公爵は、崩れ落ちるように地面に座り込んだ。
「私はなにも悪くない。なぜ、公爵家に産まれただけで王に跪かないといけないのか。私の方が相応しい。私はただ必要な事をしただけだ。ただ私は‥‥‥」
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