第12話 朝露

ミラージュは、洞窟の出口から外へ出た。


洞窟の出口には雑草が生い茂り、茂みに覆われている。一見するとここに洞窟があるとは分からないようになっていた。


ピチチチチピチチチ


小鳥のさえずりが聞こえる。


周囲は明るくなり、心地いい風が吹いている。


木々の葉は朝露でキラキラ輝いていた。


ミラージュは、姿勢を正し、ドレスの裾についた土を払った。


グランと会うために着たはずの薄紅色のドレスは、泥だらけになっていた。所々茶色の泥が付き、色が落ちそうにない。


幸いな事に、洞窟の事は誰も知らないらしい。周囲には人の気配が無かった。


できるだけ離れないといけない。


ミラージュは、木々に覆われる目の前に向かって歩いていった。


暫く進むと、古ぼけた小屋が見えた。


小屋の中に恐る恐る入ると、ドアの横に長いマントと長靴が置かれていた。埃被っており、何年も使われていないらしい。


ミラージュは、マントと長靴を手にして、身についていた銀製のブレスレットを金具に掛けた。


所々裂けてしまった汚れたドレスの裾を引き裂き、長く黒いマントを羽織る。長靴を履き、マントのフードを被った。


ミラージュは、小屋から出て、街道を目指した。


大きな長靴で枯葉を踏みしめ前へ進む。街道にはすぐにたどり着いた。


早朝にも関わらず、沢山の騎士達が街道を走り抜けていた。


(あれは、王国兵?)


ミラージュは、街道に出て、公爵邸とは逆の方向へ歩を進めた。


騎士達は、ギガリア公爵邸へ向かっているようだ。


ミラージュは、フードを深くかぶり騎士達とは逆の方向へ歩いて行く。


「急げ!」


バッカッ、バッカッ、バッカッ、パカ、パカ。


馬に乗り走り去る騎士達の中の一人がミラージュに近づいて来た。


ミラージュは、緊張しながら、気づかれないように俯いた。


ドン。


目の前の騎士は、馬から降りたみたいだ。


(せっかく逃げてきたの。ギガリア公爵邸にはもう行きたくない。次捕まったら私は、、、)











「ミラージュ」









ミラージュは、その声に驚き顔を上げた。

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