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城の模擬天守を眺めながら、だらだらとした階段を上ってゆく。城自体は既に廃城となっているが、その跡には郷土資料館や展望台を兼ねる模擬天守閣、広々とした公園などがあって、昼間は散歩する親子連れや老夫婦などで、そこそこ賑わう。
階段の途中に、一人の女性が立っているのが見えた。十段ほど向こうにいる。年は僕より少し上で二十歳そこそこ。髪を上品に結わえた、ゾッとするほどの美人だが、道行く人は誰も見向きしない。体が触れ合うすれすれのところを通ったりして、その存在にまるで気を止めていないようだ。
しかし僕には見える。一度でも神様と繋がりを持てば、何世代経とうとその縁は消えない。
女性も、僕に気づいて微笑んだ。僕が軽く頭を下げると、その姿がふっと消える。立ち止まる僕の背中を風が吹いて、背中をちょんちょんと突かれた。振り返ると、さっきの女性だ。
「――久しいですね。忠兵衛殿のご子孫の方」
梅津功夫と言います。僕はそう言って、頭を下げた。
「氏神様――」
僕は呼びかけた。氏神様は、軽く首を傾げて、僕の言葉の続きを待っている。その仕草に、ちょっと心を高まらせながらも、僕は深々と息を吐いて言った。
「お願いがあって来ました。梅津家の呪いを、どうか解いてほしいのです」
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