空を見上げて海を想う

飴好 るりか

汐風が、恋しくて

「いい加減さー、こんなとこくるのやめなよー」


危ないよー、と、彼女は毎日、そんなことを言う。いつも初めは、私じゃなくて、ずっと、海の向こうを見つめている。


「やだ。だって私、しおちゃん以外友達いないもん」


いつものように答えると、汐ちゃんは、

にやーっと意地悪そうな笑みを浮かべて

こっちを振り向いた。


「だよねー。澪那みおなには、あたししかいないんだもんねー」


汐ちゃんは観念して、自分が今まで座っていた岩場の方から、腕だけを使って這うようにして、私のいる砂浜の方に来ようとする。

その、なんとなく滑稽な独特の仕草も、今となってはもう、私の日常の中に溶け込んできた。






あの日。


「ねー、澪那がこっちきてよ。あたし、足なくなっちゃったからさー、動きにくいんだよね」


汐ちゃんと再開した日。汐ちゃんが何でもなさげに、さらっと口にしたその言葉を聞いた時、少しだけ考え込んだ。けれど、直ぐに腑に落ちたから、対した疑問は湧かなかった。



足のない、もの…、


……そうか。







汐ちゃん、幽霊になったんだ。

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