闇と光の間
中筒ユリナ
第1話 使命
「よいか。ジャンよ。
境目にいるのだ。それ以上奥は行ってはならん。」
父にこの言葉を言われてどれくらいの時が過ぎただろうか。
私の名は「ジャン」そして私の弟である「シリウス」。
私達は言わば兄弟だ。父は私達を順番に生み出した。
私とシリウスは幼少期、仲が良く、私達は自然溢れる世界で遊んだものだ。今思い出しても懐かしい。
私達はある程度成長を遂げると、離れるべき時が来る。
シリウスは父により、事情があり、私との記憶を全て消され、とある宇宙の種族に預けられる。そして、彼は光の大元のエネルギーとも言える神とも言おうか、そんな方の前に差し出され、
全ての能力、力を貰うことになり、
「シリウス」から、そう、「シヴァ」となった。
一方、私は闇との境目に行く事に。
シヴァとの繋がりは私が闇の境目に行って暫くしての事だった。
父がシヴァに私との記憶を戻したわけだ。
私が「闇」ならば、シヴァは「光」私達はお互いに繋がる事で、私はシヴァを通して、「光」を見る。
又、シヴァは私を通して「闇」を知る。
かなり離れては居るが私達はお互いを知る事ができた。勿論、会話もだ。
私達にはもう一人兄妹がいる。末に妹だ。私はこの妹が闇に引きずり込まれる様を見て、父に懇願したのが、「闇」との境目に行くきっかけとなった。
こうして、父は私の住まいを闇との境目に用意し、真っ黒な衣を用意してくれた。
この衣は私の精神を護る物で常に身にまとっている。
父が私に与えてくれ、私はその世界に降りた。
だが、降りたものの。。。
ジャン「やれ。。。困った。。
降りて来たはいいが。。。何をどうするか。。。」
きっと、「闇」となれば、普通は恐いとか、不安とか。
そのような気持ちになるかもしれない。
だが、私にはそのような気持ちすらなく、ただ、「困った。。」と言うものだった。
住まいには私独り。
何を何処からしたら良いのか。。
とりあえずは、外に出てみる事に。
この境目と言う世界。
景色は変わらず、空はあるものの常にグレー色で全体的には、薄暗い感じだ。勿論、太陽なんて光などはない。
土はあるが、荒れており、草木などほとんど無く、ただ一面薄茶色の土が広がっているようなそんな世界だ。
ここには他に誰か住んでは居ないのか、周りを見渡すが誰も居らず、私独りのようだった。
なぜ、私独りなのか?不思議ではあったが、この境目の世界こそ、父が私に用意した世界だった。
道理で誰も居ないはずだ。。。
やれ、困ったぞ。。。
暫く歩いて行くとその先は真っ黒な世界が広がっていた。
(なるほど。。。これ以上行っては駄目だと言うわけか。。。)
その真っ黒な世界をこちら側から見ていると、一人かなり大きな身体の男が見えた。
はっきりとは姿が見えないが、私をその者はじっと見ている事が伺えた。
ジャン「見られているな。。。」
彼は段々と、こちらに寄ってくる。
近くまで来るとやっと男の姿が見えた。
かなりの大男だ。
私よりも、何倍も大きい。
そして、姿はグレー色に染まり、薄い衣を身にまとっている。
顔の表情はあるが、やや醜い男だった。
男が私に声をかけてきた。
「お前はだれだ?
こんな世界はなかったはずだ。」
少しの怒りを含み私を睨む。ただ、男の身体の中に一欠片とでも言うか、僅かな光る物が見えた。
ジャン「驚かせてしまったな。
私はジャンだ。」
男は、私に近づき、こちらの世界へ入ろうと手を出す。
するといとも簡単に私の居る世界へと入ってきた。
これに1番驚いたのは、私ではなく、この男だ。
「なんだ?、、、ここは。。」
男は真っ黒な世界にいた時よりも姿がはっきりとしていた。
大男には変わりはないが、短髪に堀の深い顔立ちだ。
ただ、やはり私からは一欠片の光る物が男の内側から見えた。
大男「なんだ?こんな世界はなかったはず。お前の仕業か?」
ジャン「私はジャンだ。
すまない、驚かせた。」
男は不審な表情を浮かべる。
男「何処から来た!誰の元にいくんだ。」
私は彼の質問ぜめにタジタジだった。
そして、男の言わんとする意味が理解出来なかった。
男「あんた、上から来たんだろ?」
ジャン「あぁ。。。」
男「だったら、誰の元に行くのか?
悪魔か? 宇宙絡みの連中か?」
男からのそんな話を聞いても私には全く意味不明だった。
私が不審な表情をしていたのか、男はため息をつき、私にこう言った。
男「行く宛もないのかよ!そんなんじゃ、わけのわからん連中に連れて行かれるぞ!
仕方ない。俺が引き取ってやるよ。」
男の話の内容がいまいち理解出来ず、尋ねる事に。
男「なんだ?こっちの事も知らずに来たのか? 全く
これだから、素人は・・・」
ジャン(し、素人・・・?プロがいるのか?・・全く意味不明だ。。。)
そう、この男との出会いこそが私のこちらでの世界での立ち位置に繫がっていく事になるのだ。
彼こそが、今でも私の隣に居てくれる一神教の神だった。
名は仮名だが。
「カイム」とする。
不思議なもので、私が居る世界には誰もが入れる訳ではないらしい。
「おい!ジャン!
ここは、お前の世界なんだろ?
だったら、お前の世界を作らなければな。」
ジャン「・・・?」
カイム「なんだ?自分の世界を作りに来たのではないのか?」
私はカイムに来た事の目的を話した。
カイム「なるほど。。。知る為か。
それなら、尚の事、自分の立場を確立させ、奴らからは侵略されないような世界を作らなくては駄目だな。
でなければ、奴らに呑まれ、利用されるだけだ。
暫くは、その衣、頭からすっぽり被り、顔すらも見せない方がいい。
それで連中が必ず、この世界を見つけ侵略しようとする。
必ず奴らは来るはずだ。」
カイムの言った通りすぐさま、わけのわからない連中が集団で近づきやってきた。
無断でこちらに入ろうと身体をこちらに触れた途端に黒焦げになった。
これを見た周りの連中が次々と野次を飛ばしてくる。
カイム「ここは、この者が君臨する処だ。無闇やたらと手は出せんぞ!」
私の風貌を見た連中は神妙な表情を浮かべる。
「何者だ!誰の許しでこんな場所を作った!」
「私はジャン!
上から落ちてきた者を吟味し、如何にするかを私が決める!」
私の雰囲気にただ者ではないと悟った連中は一旦引き下がる。
そして、またたく間に私の世界は噂になる。
かなりの噂なのだろう。
連日次々と野次を飛ばしにわけのわからん連中がやって来ては、丸焦げになり帰っていく。
暫く、そんな日が続いていた。
そうして、また一人、二人と、私の世界に意図も簡単に入れる連中がやって来た。
はじめは必ず憎まれ口を叩くものの、こちらの世界に入れた途端に、妙に大人しくなる。
そして、暫くの間その者と一緒に過す。互いに胸内を話す。
理由は様々であるものの、
ある者は傷つき降りてきた者や、
またある者は、落ちてきたと話してくれた。
気がつけば、落ちていたと。
彷徨ううちに、ここにたどり着いたとか。
様々だった。
私は彼らに共通する点を直ぐに知る。
そう、カイムもだが、この世界に意図も簡単に入れた者の内側には僅かな光が見えるのだ。
私は彼らに暗黒に行かずともここに居るように話した。
私は既に決めていた。
彼らの様な者達をこの世界で捕まえ、ここで吟味し、私の元で働くか、光の世界に返すか、又は、闇側に引き渡すのか。
その闇側も私が吟味し、引き取らせる。そのような立ち位置に君臨し、取締る役目をすれば、自ずと闇を知る事ができる。
カイム「なんだ。やっと、覚悟が決まったと言うんだな。」
カイムは普段は暗黒の世界にいる。
だが、時折、私の様子も見に来る。
いつからか、カイムとも離れていても繋がり、会話なども出来るようになっていた。
そんな頃には私はシヴァとも繋がる事になる。
記憶を戻したシヴァと再び再会した事は、私の喜びだった。
そうして、私の世界は少しずつ、確立されていく事になるのだ。。。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。