第16話 世界を知った小鳥。
ケージが帰った後、俺達は各自の席に戻った。嵐が過ぎ去った様な感覚だ、無性の虚脱感が全身を襲う。
「お疲れ様です、ベリアルさん。ところで、去り際に"またのご依頼"って言っていたと思うんですけど、何か依頼を引き受けていたんですか?」
アイシャが要らぬ所に目を付けた。
個室ではなく、公の場で発言したのは少々問題があったか。
「いえ、大した事ではありません。それよりも、カナリア様は今後どうするのでしょうね」
カナリアが必死に冒険をしていたのは母親の病を治す為だ。それが達成された今、冒険者に固執する必要はないのだが。
「きっと続けると思います。今回母親を救った事で、より一層自分の『
「そうですね。冒険者の冒険が、個人の自己満足に終わるのは一番虚しいものですから。国民に慕われ、必要とされてこそその更に先にある理想へ冒険を続ける意味が広がる。カナリア様は、きっと成し遂げてしまわれるでしょうね」
カナリアが『聖女』の『
ちなみに、『聖女』を俺の『鑑定』にかけてみたが、そもそも女性限定『
俺に取得出来そうにない。
事実上の『
「時にベリアルさんっ。カナリアさんが今後復帰するとして、どっちを選ぶと思いますか?」
少女漫画的なシチュエーションでも想像しているのだろうか。私を求める二人のイケメン男子。ああ、私の為に争わないで〜的な。
珍しく興奮気味で、是非とも俺に予想して欲しいようだ。
「オルゴ様はまだ諦めてないのでしょうか。まあ確かに目的が達成されたなら、干渉しない理由もなくなりますが」
「勿論ですよっ、で……どっち。ねぇどっち!」
「そうですね……」
俺は真剣に考えてみた。
生まれた時から常に一緒だった幼馴染。しかし、突如現れた貴族の息子という存在は、彼女にとって新鮮で世界が生まれ変わった様だったはずだ。
「世界を覚え、大空を自由に羽ばたいた
「あはは、答えになってないですよ〜っ」
俺とアイシャは暫く笑い合った。
…………
……
『カナリアちゃん!』
『なあに? ケージ』
『ボクはカナリアちゃんの傍にいる。カナリアちゃんが嫌と言っても、ボクは絶対に君を離さないよ。だから───』
───
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます