第二十五話 バトラーと職人達
「ふぅ。一通り終わりましたか」
バトラーは軽く汗を
そこには少なくない魔道具の数が置かれていた。
コンテストの一件以降この工房への修理依頼や魔道具
むろんシャルロッテの影響もあるのだろうがそれ以上にカーヴがうまくこの町で立ちまわった結果だろう。
実際問題
(仕事を覚えていて助かりました。頭では思い出しながらでしたが体が覚えていたようで)
そう言いつつ魔道具を違う部屋に運ぶ。
運び終わったらまた店頭に戻り受付に座る。
が、予想外の――いや予想していたがまさか本当になるとは思っていなかったことが起こった。
「す、すみません……」
軽く扉が開く音がしてその方向を
「ひぃ」と軽く悲鳴が聞こえるも気にせず
「あ、あの~。新人さんでしょうか? 」
おどおどした男十人ほどが中に入りバトラーに聞く。
彼は威圧を飛ばしながらも
「この工房と、
「お、お嬢はいますかね? 」
職人一人がバトラーに聞く。
威圧のせいかどこか顔色が青い。
若干体も震えているようだ。
「お嬢、というのがニア殿のことならば奥にいますが……。まず貴方達はどちら様でしょうか? 」
追撃と言わんばかりに更に圧を掛ける。
職人
「お、俺達は前までここで働いていた職人だ」
震える声でそう言った。
が、バトラーはそれを聞き大きく
(シャルの言っていた通りですね。私としてはそんな
机に手をやり
しかしながら一連の動作が流れるようで絵になっている。
流石バトラー。相手を
「我が主人からも、ニア殿からも貴方
軽く事務的に
アポイントメント、という言葉に「あ、あぽ? 」「あぽいんと……め、んと? 」と首を傾げ、何を言われたのか
しかし集団のリーダーであろう男は混乱せずに――
「んなもんいらねぇ! 俺達は手助けに来ただけだ」
「手助け? はて。それは一体どういうことでしょうか? 」
「
「……元のお仕事は良いのですか? 」
バトラーがそう言うと「うぐっ! 」とダメージを食らう職人
何人かは気まずさゆえか顔を
「し、仕事は……やめてきた。助けるためにな! 」
「止めてきた。はて、職人というのはそう簡単に職を
「そんなわけねぇだろ! お嬢一人じゃ回らねぇと思ってこうしてきただけだ」
「今は三人ですが、ね」
そう言うと台から背を離し軽く背筋を伸ばして前を向く。
細身ながらも威圧感あるその姿に更に気圧され中には
「俺達は
「……ニア殿を、一人にして商会へ移った者がそれを言いますか? 」
致命的な一撃である。
職人達はここにきて自分達が何をしたのかバレていることに気付いた。
が、もう遅い。
「差し
「うっ! 」
「彼の『犯罪組織』ランド商会に移りこの工房
そう言いながら男達の近寄るバトラー。
そこにはシャルロッテやニアに見せる
あるのは『無関心』。
冷たいそれである。
そして断頭台の
「出ていきなさい。恐らくこの町に、少なくとも魔技師工房に貴方達を必要とするところは無いでしょう」
そう言い全員投げ出した。
★
「くそっ! あの執事かぶれが!!! 」
商業区を少し離れた薄暗い路地裏、リーダーの男が声を上げて
他の元カーヴ工房の職人はその姿に少しビビるも気持ちは同じ。
今にも同じように叫びたい気持ちであった。
「にしても魔技師ギルドの名誉
「おかげで俺達は
カーヴ工房を
しかし彼らを引き抜いた商会——ランド商会は事実上崩壊。
商会長の今までの犯罪が明るみ出て幹部は全員
商会に
この職人達も例外ではない。
一応、ランド商会という名は残っているがいつ潰れるかわからないほどに落ちぶれている。加えるのならば中身はすべて入れ替わり他の商会に吸収された状態だ。
まさに
「あいつがいなければ」
「おや。君達はもしかして、もしかすると何かの職人さんなのかい? 」
突然声を掛けられビクンとする。
突然のこと過ぎて体が動かない。
「これは失敬。僕は怪しいものじゃないのだがなにやら話し声が聞こえてね。服装からして職人さんかと」
声は男のようだ。
そして時間が経つにつれて緊張が解け、体が動くようになる職人達。
ゆっくりと振り返り声の方を見た。
そこにいたのは
「……てめぇ。何もんだ? 」
ドワーフの職人が口を開く。
ドスの効いた声だが――
「見ての通りエルフの研究者です。あ、違いますね。聞きたいのはそれではないですね。失敬、失敬。僕は前から早とちりする
病的にまで白い顔に緑の瞳をぎらつかせながら職人集団に挨拶した。
「……実は僕この町に来て間もなく右も左もわからないのですが……お聞きしてもよろしいでしょうか? この町の事」
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