第757話 ミュンヒ城の籠城

 街の北にあるミュンヒ城の入り口ではワイバーンのルッツが待ち構えている。その横を、ミュンヒ王国の再興に賛同すると思われる住民たちが通るのである。

「念のためです。武器になるものはいったんこちらに置いて行ってください」

 そのルッツの威圧も活かして、その場所で荷物改めを実施する。元ミュンヒ王国の兵士たちも、リスチーヌとアルマティもそういうことに精通しているわけではないので厳密な検査にはならないが、やるのとやらないのでは大きな差なので実施している。


「ジェロ様、そろそろ迂回してきた兵士たちが到着しますね」

「仕方ないね。殺したくないから、≪氷結≫を多用して捕獲してね」

 魔人と悪魔たちは殺してしまう方が楽だし魂が貰えるからありがたいのに、と不満いっぱいのようであるが、ジェロは許可しない。


 夜になったばかりに作戦開始したので、深夜になる頃には一通り落ち着きを取り戻す。

 結果として捕縛した兵士の数は数十人ほどであり、武器は全て取り上げてから後ろ手に縛り付けてある。

 一方、同じく棍棒などの武器を回収した住民たちは100人を超えており、城の広間に集まって貰っている。

「みんな、よく駆けつけてくれた。私がディートマル・ミュンヒである。魔法の力を間近に見ることができたと思うが、あれは我々の味方の力である。いったん今夜はゆっくり休んで欲しい」


 ディートマルは努めて冷静になろうとしているのが分かるが、グンドルフたち幹部は興奮を抑えられていない。

「いよいよですな」

「この勢いならば城だけでなくミュンハーフェンの街も制圧できるのでは?」

「いや、これで良いんだよ。これ以上は怪我人が出て我らに対して強い不満が出てしまう」

 ジェロはディートマルが抑えるのを見て、下手に口出ししないようにしている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る