第753話 ミュンヒ住民3

 ディートマルたちがある程度まで近づいてくるのを待っている間に、だんだんとジェロの家に夜中に訪れてくる人数が増えてくる。

 中には帝国軍に入っている兵士たちもいるので、ハポリエルからは、ミュンヒ城の昼間の巡回の中に居たと教えられる者も居た。

 罠かどうかも分からないままなので、少し線を引いた対応を続けているジェロたちであったが、このミュンハーフェンでの若者たちの焦燥感は事実なのだと思われた。


「もしもですが、みなさんが他国に逃げ出したとして残された人たちはどうするつもりですか?」

「転戦している親父たちにはすまないと思うが、お袋は無理矢理にでも連れて行こうと思っている」

「うちも」

「そうか、うちは置いていけと言っている。足手まといになりたくないし、生まれ育った土地を離れたくないらしい。でも、俺たちには出ていけと言っている……」


『まとめて移動する良い方法はないかな?』

『≪転移≫系の魔法が使えると便利なんだけど』

『ヴァルでも無理なんだよね?』

『そうね。荷物を魔法の袋に入れて、戦馬に相乗りさせていくぐらいだろうね』

『馬車だと足が遅くなるからなぁ』


 話を聞けば聞くほど移民の受け入れをしたくなるジェロであったが、移住希望者は少なく見積もっても1,000人単位になる。元々は小国とはいえ人口が何十万人もいた王国であり、その王都であったミュンハーフェンの街である。

 数人ずつを≪飛翔≫で運び出すのでは間に合いそうにない。

「ジェロ様、ラーフェン王国への国境は遠いのでルグミーヌ王国に逃げ込む方が現実的と思います」

「帝国軍の追手がルグミーヌ王国に迷惑をかけないかな」

「流石に他国領土にまでは、一般住民を追いかけては行かないかと」

「それを基本に今後の行動を考えるとしようか」

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