第751話 ミュンヒ住民

 ディートマルたちと意識を合わせた後、ジェロは再びミュンハーフェンの街に戻り、彼らがもっと南下して街に近づくのを待っている。

 その待ち時間で、夜中のうちにミュンヒの城の構造を上空から把握する。


「遠くからはよく分からなかったけれど、城壁など本当にボロボロだね」

「きっと20年前にミュンヒ王国が陥落したときのままなのでしょうね」

「これだと、帝国兵がほぼ配置されていないのもわかるね」

「増援部隊を送り出した後というのもあるのでしょうね」


 あまり近づき過ぎると、万が一でも帝国兵に見つかって今後の行動が取りにくくなることが懸念される。

「ハポリエル、姿を消したまま探索してくれるかな」

 姿を消せる悪魔ハポリエルに、夜間だけでなく昼間での兵士の人数や配置などの確認を頼んで、購入した住宅に戻るジェロ。


「ジェロマン様、夜分ですがお時間は大丈夫でしょうか?」

「近所の住民から相談があるとのことでして……」

 夜に出かけていたことが露見してしまったのかと思ったが、そうではないようである。どちらかというと、先方も他人の目を気にして夜中に訪問して来たのであった。


「ジェロマンさん、夜分にすみません。他国から来た冒険者のあなたに教えて頂きたいことがありまして」

 話を切り出して来たのは成人して数年の二十歳前後の若者2人であった。

「このままこの地にいても未来への見通しが立たない。どこかに逃げ出したとして、受け入れてくれるところはないものかと思いまして」

「こいつはまだましな兵士になっているから良いですが、私なんて街の周りの畑を耕している農家ですからね。搾取されるばかりなんですよ」

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