第690話 インラントの外

 燃やしたインラントの街の東門。その外で見えるように平原にて待機しているディートマルたち100騎。

 またそれをさらに遠く離れたところから見ているルネリエル王弟やノイナイアー侯爵たち。万が一のことがあるため、ルグミーヌ王国の騎士団たちには街の違う方面の包囲に移動して貰っている。

「テルガニ侯爵、我々も活躍の場が頂けたらありがたいのですが。これはメンヒルト王女からの命令でもありまして」

「いえ、皆さんには安全なところにいてもらうだけの方が良いのです。王女殿下には申し訳ありませんが、その旨をお伝えください。コンスタンも後方待機させていますと合わせてご報告いただけますと承知いただけるかと」

「そうですか……私個人としても何かできればと思ったのですが。承知しました。どうかご安全に」

「ありがとうございます」


 そして、朝日も上がってしばらくした頃。

「ムスターデ帝国軍をバカにしおって。そんな少数の騎兵で挑発とは罠であろうが、その罠ごと蹴散らしてくれるわ!」

 500騎ほどの騎馬が、街の中で助走済みだったのか駆け出してくる。

「思ったより多いですね。流石は最前線を任されている将官なのでしょうね」

「グンドルフ、俺たちミュンヒの将兵だってあれぐらいできるぞ」

「ヤーコプ、敵の良いところは素直に認めても勝つのが我らミュンヒの誇りだぞ」

「二人とも。そろそろだぞ。流石は元ミュンヒと言われるだけの結果を出すぞ!」

「「は!ディートマル様、おまかせを!」」

 しっかり引きつけた後、予定している方向に馬を走らせる。ジェロたちが上空に上がった気配を確認しつつ、ネベルソンがつまらなそうに低空を≪飛翔≫してついて来ていることも確認できている。

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