第683話 インラントの街2
「テルガニ伯爵、何か良い手立てはないものでしょうか?」
住民の不満もあり、内応もあまり期待できそうにないため、軍議の中でジェロに相談がくる。
「そうですな、テルガニ伯爵の魔法の力で、帝国兵など一掃して貰えば良いのでは?」
覚悟はしていたが、他国の平民どころか孤児院育ちで、さらにその他国の侯爵であるジェロに対して、もともとラーフェン王国の貴族だった者の一部からは良い感情を持たれていない。今のようにうまく物事が進まずうっぷんが溜まる時にはどうしても矛先になる。
「ノイナイアー侯爵のおっしゃる通りですな。ぜひテルガニ伯爵のお力で」
「ノイナイアー侯爵、ハーニッシュ騎士団副団長。もちろんテルガニ伯爵のお力もお借りしたいですが、我々でできることも……」
「レーハーゲル魔術師団副団長、そうおっしゃるならば魔術師団は何ができるのですかな?」
ジェロが答える前に、貴族たちのやりとりが始まる。三人とも王国復興の後に貴族で返り咲いた者たちであり、ウッツ・ノイナイアーは文官の侯爵で息子をモーネ王女と結ばせたがっていると噂がある。オドヘート・ハーニッシュは血筋から若く侯爵になった騎士団副団長でモーネを狙っているらしい。そしてジェロの味方であるハンネマン・レーハーゲルは伯爵の魔術師団副団長だが、ラーフェン王国も魔術師が少ないことから魔術師団の立場が騎士団よりも低い。
『まだ国を取り返し終わってもいないのに、つまらない争いをしているわね』
『悪魔のヴァルからすると余計にそうだよね』
「城門が頑丈には見えますが、門扉のベースはやはり木材のようですので、これを燃やすのはいかがでしょうか?」
「ははは。火矢程度では燃えないだけでなく、あれだけ金属で補強されているのですが大丈夫ですかな?」
「はい、ベルカイム王国の王都ルージャンの城門も、リブルドーの街の城門も可能でしたので」
ジェロの提案に対して魔法の威力をバカにしているハーニッシュが笑うが、実例を提示すると苦虫を潰したような顔になる。
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