第682話 インラントの街
ルグミーヌ王国軍と合流したラーフェン王国軍はザスニッツの街から南下してインラントの街に向かう。
「あれは!」
インラントの街はラーフェン王国でも南西の街であり、もともとムスターデ帝国への最前線の街であるため城壁も高く城門も頑丈な防衛に優れた街である。平原に囲まれた街の、その城壁の上に帝国軍の旗が数多く風になびいていた。
「うーん。流石にムスターデ帝国も自国に接するエリアは容易に奪還させてくれないということか」
「王弟殿下、そうなりますとモーネ王女殿下たちの方も苦戦されているのではないかと」
「その可能性はあるが、もともとそのためにあちらの方に多くの将兵を割いているのだ。まずは我々が目の前のインラントの街を解放する」
「は、承知しました!」
今まで解放して来た他の街では、ジェロが≪飛翔≫でモーネ王女を上空に連れて行っての住民に対する呼びかけや、街の中にいるレジスタンスの内応により、解放軍や住民の被害を少なくできていた。
モーネ王女に比べると体重差のあるルネリエル王弟であるが、≪筋力向上≫を用いたジェロに≪飛翔≫で上空に連れて行って貰うことで同様の呼びかけを行うが、モーネ王女ほどの反応は無い。
歓迎の声もあった一方で、
「どうして我々南部の街を今まで見捨てて来たんだ!」
「南部は帝国に占拠されたままで良いと思っているんだろう!」
という声もある。
夜中に街中に送り込んだ密偵が飲み屋で仕入れてきた反応でも、同様の声は実際にあるようであった。
「王都ジークセンや東部、北部をユニオール皇国やコンヴィル王国の協力で解放した後、ルグミーヌ王国の協力で西部も続けて解放できていた。帝国と接する南部は後回しになってしまったのは事実なのだが……」
「はい、見捨てられた、切り捨てられていた、という住民の不満は思ったより多いようです」
「なおさらこれ以上は待たせるわけにはいかないな。不満解消はそれからだ」
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