第654話 モーネ王女と魔人

 ジェロたちはベルカイム王国の王都ルージャン付近を出発してからは≪飛翔≫で南下を続けている。王都から南の国境のローニャックの街まで全てムスターデ帝国の支配下にあるため、万が一の面倒を避けるため街には寄らずラーフェン王国に向かう。

 そしてラーフェン王国でも騎乗しているわけではないので≪飛翔≫を続け、王都ジークセンまでたどり着く。


「もしやテルガニ様でしょうか?解放戦の際に助けて頂いた者です。こんな少人数で!?」

 王都についたのは良いが、王城に入ることを希望したときに門番に止められてしまう。確かに男女4人だけの徒歩の人間が怪しまれてしまうのは仕方ない。

「こちらは、コンヴィル王国の侯爵で、ラーフェン王国でも伯爵のジェロマン・テルガニ様ですよ」

とのリスチーヌの訴えが効いたのか、ジェロのことを知っている人を連れて来て貰えた。


「ジェロ様、やはり馬車に乗るなどの威厳が必要みたいですね。気がまわらず失敗ですみませんでした」

「いや、無事に王城に入れて貰えたし、モーネ王女たちにもお会いできそうだから」

「意外と顔を知られていないんだな」

「ネベルソン、あなたそろそろ奴隷契約の主人様への言葉遣いを学ばないのかしら!?」

 リスチーヌの言葉も右から左の魔人。文化が違うと言えばそれまでなのかもしれないが。



「テルガニ様、ようこそいらっしゃいました!」

 案内された小規模な来賓室で待っていると現れたのは王弟ルネリエルと王女モーネ。

「いえ、領地を頂き叙爵してくださったのにご挨拶が遅くなり申し訳ありません」

「とんでもないことです。勝手な押し付けになりまして」

「ところでそちらの方は?」

「は、彼はネベルソンと申します。ヒルデリン王子の関係で」

「そうです、テルガニ様がいらっしゃったということは、ヒルはもう大丈夫なのでしょうか?」

「はい、ご安心くださいませ」

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