第647話 捕虜の魔人

「テルガニ侯爵!流石ですな!」

 陣地にはヒルデリンたちは残っていたが、ドゥケ司令官やデュクロ副官などは前線に出ていたため、夜が明けて戻ってくるのを待っていた。その戻ってきたプランケットの発言である。


「王都の方はいかがでしたか?」

「テルガニ侯爵による門扉の破壊、敵方の強力な魔法使いの排除で帝国兵は逃げ腰。今は王城に籠っており、街中は解放済みです。王城の陥落も時間の問題でしょう」

「それは良かったです」

「ところで、敵の魔法使いは?」

「実は3人居たようで、その魔人3人とも捕縛しております」

「やはり魔人だったのですか。しかも3人とは。それを生かして捕縛できるとは……やはりテルガニ侯爵は敵にまわしたくないですな」

 司令官のドゥケがおどけてくる。


「その魔人を我々に引き渡しはして貰えないのですよね?」

「はい、あくまでも我々の所有物になりますし、我ら冒険者の依頼主であるラーフェン王家の意向を優先させて頂きます」

「仕方ないですね……逃げられたり自殺されたりする前に王都の奴隷商を連れて来ましょう」

 王都ルージャンにはしばらく居たので道に困ることは無いつもりだったが、戦中の高まった感情での面倒ごとを避けるためのデュクロの発言と理解し、言葉に甘える。


 凍った3人への見張りはリスチーヌとアルマティに任せて、ヒルデリンのところに行き遊び相手になっていたジェロ。奴隷商が到着したということで、3人を起こして戦争奴隷の手続きをして貰う。


「まさか我が……人間に魔法で負けて奴隷になるとは……」

「ま、それほど理不尽なことを頼むつもりは無いけれど、色々と教えて貰ったりするつもりだからよろしく。基本的には仲間たちのためにならないことをしない、仲間のことを思って行動する、それを守ってくれれば良い」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る