第641話 ルージャン攻め準備

「コンヴィル王国の陣営にも使者を送っております。今夜、皆が寝静まった頃に夜襲を行うことを伝えましたので、一緒に攻めてくれると思います」

「承知しました」

「テルガニ侯爵たちが、あの敵の魔法使いの相手をしてくださることも併せて伝えていますので」

「私のことなど分からないかも……」

「いえ、流石にガニーの英雄で、ラーフェン王国の解放の立役者のことを、コンヴィル王国の方々がご存知ないとは」

「新参者ですので……」

 デュクロが個別でジェロの部屋にやってきて情報を伝えてくれている。


「領地まで与えられたら、皇国への移籍は難しいですかね。テルガニ侯爵にはぜひ我が国の魔術師団にお越し頂きたかったのですが」

「買いかぶりですよ。私など」

「そういうところもご一緒にお仕事したいと思う点ですよ」

 前世記憶の謙遜文化が染み付いているせいかと思いながら、これまた日本的な微妙な笑いをしてしまうジェロ。

「昼間の間にヒルデリン王子にお会いし、仮眠をとることにいたします。色々とありがとうございました」


 ヒルデリンにすると、ラーフェン王国が陥落した後、モーネ王女と共にずっと行動をしていたジェロ、リスチーヌ。途中参加ではあるがそれでもルグミーヌ王国から王都ミューコン経由でモージャンまでの長い馬車旅でも一緒であったアルマティ。この3人は、皇国から割り当てられた使用人たちよりも安心できる相手である。

「気を張っていたのでしょうね」

「昨日も涙をこらえているのが分かりましたよね。こんなに小さいのに立場をわかって我慢されているのですよね」

「我々が居る間だけでもゆっくりお休みいただこう」

 ジェロに抱きついたまま眠ってしまったヒルデリンを優しく見守る3人。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る