第622話 開拓地での勤務者2

 開拓地での人手として孤児院から見習いを雇う話が進むが、遠さが課題となる。

 ガニーの街と開拓地との間は、通常の馬で片道2時間ほど。戦馬バトルホースではそれよりも短い時間で移動できる。前世では通勤片道2時間は珍しくは無かったが、暗くなった夜でも街灯などがあり電車などの公共交通機関もあり安全であったが、ここでは電灯もない月明かりだけで魔物に襲われる危険がある。


「住み込み見習いも普通にあるわよね?」

「でもまだ何もない開拓地でいきなり住み込みにするのも……」

「じゃあ、どうせ慣れるまでは昼間のちょっとだけ勤務ということで明るいうちに移動する?」

「みんな馬に乗れるわけじゃないわよ」

「まず騎乗を覚えて貰おう。これからも役立つだろうし」

「それまでは、騎兵隊に二人乗りして運んで貰おうか」

 エムと仲間達で相談し、大体の方向性は決まる。


「私も馬に乗られないけれど、ジェロ兄が乗せてくれる?」

「あらそれでしたら、エムさんは私が乗せながら騎乗もお教えしますわよ」

「あぁそれが良いな。俺は≪飛翔≫で飛ぶこともあるし。騎兵隊に頼むより女性同士の方が気楽だろうし。エムも早く覚えたら楽だぞ」

 エムの発言に対してリスチーヌの提案が採用されるが、二人とも微妙な顔である。


「じゃあ、早く皆が住み込みで働ける建物を作らないとね。隊長たちの家の近くに確保してくれていた、先送りしていた俺たちの屋敷用敷地の一部を役所にして、子供達が住める建物も作ろう」

 アナトマがガニーの街やモージャンの街から土木建築の職人たちを手当てして来たこと、ジェロたちがお金を出し惜しむことなくきちんと現金で支払いを行ったことなどから、職人たちもこの開拓地で働くことを希望するようになる。

 職人が住む場所もなかったので仮住まいを作っていただけだが、街として整備されたら直ぐにでも引っ越してくるとの声があがる。

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