第608話 ディートマル・ミュンヒ3

 レナルマン達が手分けして戦争奴隷の者たちから仕入れてきた情報を突合する。


「そうか、彼らも帝国に滅ぼされた亡国の者たちだったんだ。で、ミュンヒというのは国名でもあり王族の名前だったんだね」

「はい、その結果で二等国民とされて、前線に送り込まれていたようです。ラーフェン東部の国境で全滅した帝国兵たちと同様ですね」

「あちらは大国の皇国との国境だったので500人規模でしたが、彼らはルグミーヌ国との国境付近のラーフェン西部の守備兵だったようです。同様に全滅するまで戦うつもりだったのが、エルフの魔法で拘束されてこのような結果になったと」

「もしかして帝国は二等国民の身代金を払うつもりはないと突っぱねたのかな?」

「はい、実はニースコンや他のところで捕虜にした将兵の多くは身代金が貰えず戦争奴隷になったままのようです」

「かと言ってジェロ様に引き渡すのに、戦争で敵対した部隊ではしこりが残ると思って、縁のなかった西部での捕虜を貰えたのでしょうね」

「もしかして、たくさんの戦争奴隷は食費など維持費がかかるから、丁度いい厄介払いでもあったのかな」

「どうでしょうか?ラーフェン王国にするとまだまだムスターデ帝国との戦争が続きますので、一般市民より戦力になる彼らは前線に送り込む方が良かったのではないかと」

「ジェロ様を繋ぎ止めるために領地だけでなくその開拓をする手足を提供することにしたのかも。コンヴィル王国とラーフェン王国の共謀でしょうね」

「ふぅ……まぁ前向きに開拓に励もうか。どこか前線で戦って来いと言われるより良いよね」


 続いて、100人の組織体制の確認である。

 ディートマルが少佐で100人の中隊の隊長。その中隊の副官で大尉だったグンドルフ・ノールという男は、元ミュンヒ王国でも宰相の家系。

 他に元王国で貴族だった男たち3人ヤーコプ・ヴォイト、アウレーリウス・ドルン、カスパー・ブットマンがそれぞれ中尉で、約30人ずつの小隊の隊長。3つの小隊は、騎兵、弓兵、歩兵を担っていた。

 それ以外の5人ほどが副官直属の共通業務部隊だったようである。

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