第593話 王都の屋敷2
前世のテレビドラマで見た、豪邸での流れのような従業員達の出迎えに腰が引けるジェロ。一方、慣れているユゲットがジェロの背中を押す。
「テルガニ侯爵がこの屋敷の主ですのでどうぞ前に」
「はい、ありがとうございます」「ジェロマン・テルガニです。どうぞよろしく」
「「は、よろしくお願いします」」
ユゲットや家臣達を伴い、まずは皆がテーブルにつくことができる部屋へ、執事と名乗ったクシミールの案内で進む。
これまたイメージ通りというか、細長いテーブルの端の短辺にジェロが座らされて、その隣になる長辺の端に来賓であるユゲットとジャクロエが、その向かいにはイド、レナルマンの順に家臣達が並んで着座する。
「では、改めてご挨拶をさせていただきます。クシミールでございます。こちらのアリエメとともに、この屋敷の従業員23名を取りまとめております」
「アリエメでございます。どうぞよろしくお願いします」
「はい、お願いします。ただ、どういうことでしょうか。屋敷を下賜されたとの認識でしたが」
「我々、今までは主が居ないままこの屋敷の管理をしておりました。正確には王太子殿下が譲位されて国王陛下になられた際に、分家として独立される他の王子殿下達のための屋敷の一つでした」
『ギャストル王子用の屋敷が余っていたということか……』
「テルガニ侯爵閣下、引き続きこの屋敷で働かせて頂けないでしょうか?」
「え?」
「今までこの屋敷のために王家に雇用されていた我々です。この度、屋敷がテルガニ侯爵家に下賜される際に、今後10年間の賃金は引き続き王家がお支払い頂けると伺っておりますが、閣下が別の方を雇用されるとなりますと、この屋敷を出て行くことになります」
「え!?そんな。では、引き続きここで働いてください。まさかそこまで王家で費用負担とは……あ、でも王都にはほぼ来ないと思いますので、そこはご理解くださいね」
「はい、承知しました。それと、我々従業員に対してその口調は他の貴族の方達からの指摘対象にもなりますので、命令口調でお願いします」
「はい、わかりま。いや、わかった」
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