第587話 王都ミューコン

 王都の手前で、ジェロとユゲットはそれぞれ魔法の袋から馬車を取り出し、貴族らしい服装に着替えてミューコンに入る。


「ですので、ご遠慮なく」

「いえそういうわけにも」

「かといって伯爵様をお泊めできる宿はそうそうございませんよ」

 王都に屋敷などがないジェロは、ユゲットのすすめでモージャン子爵家の屋敷にお世話になることになった。


 登城の事前連絡もモージャン家の従業員が行ってくれるとのことで、王都の冒険者ギルドに向かうジェロ達。

「おや、王都ミューコンの冒険者ギルド本部に所属であることをお忘れかと思っておりましたよ」

「ご無沙汰して申し訳ありません、ザール様」

「いや、冗談だ。色々と活躍している話は聞いている。少しはガニーでゆっくり出来たのか?」

「はい、おかげさまで」

 以前にモージャンの街のギルドマスターをしていたザールに挨拶をしているジェロ主従。


「で、伯爵にまでなったようだが、冒険者ギルドの職員は継続したままでいくのか?」

「え?クビですか?」

「いや、貴族になってそれなりになるし、もうその肩書きは邪魔になっていないのか?」

「いえ、私はギルド職員であることを一番にしたいので。ただ何の業務もしていませんから給料はなくていいので何とか除籍だけはせずに」

「ははは、相変わらず変わった奴だな。まぁこちらとしては魔銀(ミスリル)級、Sランク冒険者でもあるテルガニ伯爵が冒険者ギルド所属の方がメリットがあるからありがたいのだがな」



 王都にあるアナトマ商会に顔を出しても、ジェロにとって目新しい魔法カードや魔導書はなかったが、コレクション的な要素として幾つかの魔法カードは購入しておく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る