第559話 皇都での軍議2

「では、ベルカイム王国の今後の扱いは、王族の生存状況にも依存することとし、まずは帝国軍からの解放をどうしましょうか」

「今、ベルカイム王国のほとんどが帝国軍の占領下にあると言いつつ、彼らもラーフェン王国に分断され本国と連携が取れない状況です。まずはリブルドーの街を奪取することで、さらに南北に分断して個別撃破するのはいかがでしょうか?」

「なるほど。孤立させるにも王都ルージャンのある北部の解放を優先する方が良いでしょうな。南部はいざとなればラーフェン王国に追い出してでもベルカイム王国の解放ができますからな」

強国ユニオール皇国の幹部にすれば、ベルカイム王国もラーフェン王国も小国の他国であり、しかもラーフェン王国の方が守る価値が低い。とても他国には聞かせられない会話である。


「では、リブルドー、そしてそれより北部の解放について誰を司令官にしましょうか。先発でベルカイム支援軍として送ったサンディ・アデール将軍の二の舞にならないようにしないと」

「それは、ほら。ちょうど相応しい方が皇都に戻られていますよね」

「そうですな。アクセル・ドゥケ侯爵、今度はベルカイム解放軍の司令官としてご活躍いただけますかな?」

皇都で議論している者たちは自分で戦場に赴くつもりなどカケラもなく、また彼らが現場で役立てるとも誰も思っていない。当のドゥケ自身もそのことは認識しているので、反論する気にも慣れない。

「では、私は足の速い騎馬隊を率いて行きますので、追加部隊の送り込み、よろしくお願いします」

「ラーフェン解放軍を送った後に皇都に集めていた部隊をご利用ください。今回も神輿であるベルカイム王国のアンネ王女、その婚約者のラーフェン王国ヒルデリン王子を連れて行かれますかな?」

「いえ、殿下たちの年齢を踏まえると、今回は……」

「では、解放が進んでから、のお話にしましょうか」


ため息は心の中だけに留めて、ドゥケが退席していく。

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