第558話 皇都での軍議

ジェロ達はガニーの街でしばしの平和を満喫している。困り事といえば、たまに来る仕官希望者に今募集していないと断る程度である。



その頃、ベルカイム王国ではジェロ達も知ったように王都ルージャンが陥落していた。

ラーフェン解放軍であった司令官のドゥケ侯爵以下はいったん皇都ナンテールに戻っている。緊急性が高いため騎馬隊のみの移動であり、徒歩や馬車は後から追いかけて来ている。

「ドゥケ侯爵、この度はご苦労様でしたな。当初目的の国境付近でムスターデ帝国を焦らせる以上にラーフェン王国の半分の解放に協力して来られるとは」

「まったくですな。その間にベルカイム王国が帝国に占領されてしまったのですが。あなた方の行動がまったく帝国軍に響いていなかったようで残念です」


指示に従った以上の戦果を出したのに、ベルカイム側の被害が大きいため責められるドゥケ達。

「そう仰いますが、ラーフェン解放軍は指示通り帝国軍の脇腹をつくどころかえぐることで、今ベルカイム王国にいる帝国軍とラーフェン王国の南部以南にいる帝国軍を分断しておりますぞ」

助け舟を出す幹部もいるが、旗色は良くない。


「王都ルージャンが陥落しておりヤニス国王の生存には期待が持てないだろう。ザカリー王太子も、リブルドーの街への救援隊が帝国軍に殲滅されたとのことから難しいだろう。ドゥネーヴ宰相の計らい通りアンネ王女がこの皇都に避難されていたのは幸いということか」

「そのドゥネーヴ宰相自身の安否も不明だが、ベルカイム王国の幹部の生存も期待できないだろう。もし帝国軍を追い出したとしても、国の存続ができるだろうか」

「もう属国相当であったことを明確に属国もしくは皇国の1地方と位置づけるきっかけととらえられてはいかがでしょうか」

「その決めつけは時期尚早というものでは?」


自分たちの身が切られたわけではなく、どこか遠い場所のことの会話のようである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る