第542話 久しぶりのモージャン

「テルガニ伯爵、おいて行こうとするなんて酷いではないですか!」

「え、ニースコンとモージャンの間であれば、もう私の馬車などをご利用される必要もないぐらい手段もあると思いまして」

「そんなことおっしゃらず。ガニーに戻られる際にはモージャンを経由されますよね。ご一緒させてください」

ガニーへ戻る準備をしているところへやってきたモージャン子爵令嬢のユゲット達。


結局は、ラーフェン王都ジークセンからニースコンに来た時と同様、ユゲット達をジェロの馬車に乗せて、ジェロ主従は騎乗してモージャンまで移動する。

「ぜひ父にもお会いください」

「いえ、ここで失礼させて頂きます」

モージャン子爵の屋敷まで送った際にも、ユゲットの誘いは強かったが、何とか逃れ切る。

「わかりました。ただ、王都に向かわれる際には途上のこのモージャンで私たちと合流して下さいね。外交使節団での仕事に対する報奨を頂く権利は私たちにもあるはずですので」

と、約束させられてしまう。


『なかなか積極的にしたたかになって来ていたわね、この娘』

『モージャン領主様の娘さんなんて、何か失礼なことをしてしまわないか不安だったよ』

『出会った頃と違って、ジェロも上級貴族になったのにね』



「お、冒険者ギルド職員ということを忘れていなかったのかな?」

「アンブリスさん、そんなからかわないでくださいよ」

モージャンの冒険者ギルドに立ち寄り、ギルドマスターのアンブリスに顔を出す。ジェロが元々ガニーの街でギルド職員をしていたとき、ギルドマスターであったアンブリスには色々と面倒を見て貰っていたこともあり、甘えられる相手という認識がある。

アンブリスの方もそれがわかっているため、立場が変わってしまい苦労しているはずのジェロに対して、わざとそのような対応をしてくれる。

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