第514話 魔人アラトラスの不満
「ガニーの英雄はどこに居るんだ?」
「さぁな。リブルドーを陥落させたらやってくるかもな、とは言ったが」
「さらにその後、似たようなことを言うからこの王都ルージャンまで北上して来たが、全然出てこない。しかも歯応えのある奴は全然いない。まぁ、リブルドーの街で皇国から来ていた将軍だったかは、技と言うより意志の力だけがあったが」
「まぁ所詮は皇国の属国のような国。鍛えられる環境でなかったのは確かだろう」
「ふん、つまらない」
「魔人であるお前を満足させられる奴なんてそうそう居ないだろう?歯応えが欲しいならばこの場所に留まるのではなく、魔人同士で争うなり、ドラゴンなどに挑戦すれば良いさ」
「この王都でも歯応えのある奴は居ないし、そうするか」
そのまま飛び立った魔人アラトラスの立っていた位置を呆然と見ながら呟く帝国の司令。
「え?本当か?まさかな……その前に話していたラーフェン王国で劣勢との知らせの方に行くのだよな?」
血筋やコネもなく成り上がりを目指していた男、サンディ・アデール将軍が何とか踏ん張っていたリブルドーの街を陥落させたのは、魔人アラトラスであった。強力な魔法を悪魔フォメレクと共に発動することで均衡状態を崩し、数に勝る帝国軍が元々薄かった防衛線を突破したのである。
街の守備等の1,000人へ皇国からの援軍5,000人、王都ルージャンからの騎兵2,000人が、帝国軍1万人に対抗していた。国の中央部にあり防衛の城壁などほぼ無かった街である。急拵えで作っていた陣地などが魔法で崩されると、防衛の有利さなど無い。
増援の速度重視で騎兵だけが王都から先に到着していたのだが、足を止めた市街戦において騎兵の優位性は活かせない。そうなると実戦経験などない1,000人と2,000人はほぼ役に立たず、ラーフェン王国と実戦して来た帝国軍に対して抵抗できるのは皇国から連れて来た5,000人のみである。
アデールが街中で買い漁った魔法カードなどは既に消費済みであり、王都ルージャンに向けて順次後退しながら撤退戦を続けるしか無かった。途中の街もそれぞれ防衛に適した拠点はなく、少し優位な場所があっても魔人達の魔法攻撃で潰されてしまっていた。
撤退戦の途中で、南下して来ていたベルカイム王国のザカリー王太子や輜重隊とも合流したが、混戦の中、ザカリーもアデールも行方不明になっている。
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