第488話 皇都からの進軍

「テルガニ子爵、そのような雑事は我々にお任せください」

皇都からラーフェン王国の国境に向けてゆっくり進軍している集団。歩兵がいるのもあるが、ベルカイム王国に侵略している帝国兵に対する牽制の意味もあるため進行はゆっくりである。二千数百人も居る集団であり、どれだけ大きな街でも宿だけには入りきれないため、基本は野営になる。

その中でも、モーネ王女達の集団は、一応皇国からの護衛と使用人もつけられては居るものの、どうしても以前からのジェロ主従、ユゲットとジャクロエだけが気を許せる相手になるのは仕方がない。


ジェロはどちらかというと冒険者数百人の方に近いと皇国軍に見られているが、荒くれ者もいるため、本人にするとそちら側には腰が引けている。そのため、自分たち主従だけを中心にした少ないメンバでかまどを囲んで食事などをしようとしてしまう。

それをモーネ王女付きに皇国から割り当てられた使用人に注意されてしまうのである。


「ジェロ様、どうしてもというのであれば我々にお申し付けくだされば良いのに」

「いえいえ、ユゲット様はモーネ王女殿下のご対応をお願いします。ジェロ様は我々家臣が対応いたしますので」

ここにも付いて来ているモージャン子爵の令嬢ユゲットとそのお付きの女騎士ジャクロエが何かとジェロに絡んでこようとするが、リスチーヌが阻止しようと頑張っている。

『頑張るわね、彼女達』

『皇国が帝国をやっつけるとモージャンやニースコンが安泰だからだろ』

『そういう意味じゃないわよ……』

ヴァルに呆れられながら、ゆっくりで暇な進軍を続けている。


主従それぞれは交代で馬車の中でできる魔法訓練ぐらいは行えているが、それ以外は夜に木剣を用いた模擬戦ぐらいしか発散ができていない。

ワイバーンのルッツがストレスを溜めているようであるので、たまに戦馬バトルホースの脚力を活かして隊列から離れたところまで行って、自由に空を飛ばしたり角兎ホーンラビット程度の魔物狩りをさせたりしている。その息抜きにはコンスタン以外も交代で付き合うことでストレス発散できているが、流石にジェロがそれに行くことは皆が許さないため、夜中にアルマティという見張りを連れて≪飛翔≫で遠くに離れたところで魔法訓練をするのが日課になっている。

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