第454話 ジャムス・ユニオール2
「もう楽になさって結構ですよ。どうぞお立ちください」
サリニャック子爵が気さくに声をかけてくれる。大きなため息を吐いてゆっくり立ち上がり、
「サリニャック子爵、色々とご調整くださりまして、誠にありがとうございました」
と、ここはモーリートより自分なんだろうと思って代表してお礼を言うジェロ。
「いえいえ、我々派閥が頂戴したワイバーン討伐という結果に比べれば。それよりも皇太子殿下の気さくさに驚かれたのでは?我々は文官派閥というだけでなく、あの方のあのお人柄に惹かれているのです。ユニオール皇国という大国は、武の力だけでまとめ上げることはできません」
「はぁ」
どのように答えて良いか分からず、曖昧な返事になってしまうジェロ。
「テルガニ子爵のお人柄も分かってしまいますね」
と、応接室に戻りながら笑われる。
そして応接室で着座したところで、小さな布袋を差し出される。
「今回のワイバーン討伐、冒険者ギルド経由でもありませんし、表に出せなくなりましたので、皆様にタダ働きとしないためにこちらを皇太子殿下から」
「いえ、我々には皇国の方に恩に感じて貰えば、という意図がございますので、このような金銭的なものは」
「大丈夫ですよ。皇太子殿下、そしてその派閥の我々には十分に伝わっております。こちらを受け取って貰ったといってそれが減るものではありません。また、こちらは皇太子殿下の個人資産からですが、この大国の皇太子殿下にとっては、という額ですのでご遠慮なく」
色々と思考がバレてしまっているジェロは、仕方なく素直に受け取らせて貰い、モーリートとも顔を見合わせて退出タイミングをはかり、ベルカイム王国の屋敷に戻っていく。途中で、心配していたイドたちとも合流するが、道端で話せる内容でもないため、屋敷に戻ってから情報共有を行う。
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