第450話 サリニャック邸3

サリニャックの別邸からベルカイム王国の屋敷に戻り、仲間達と情報共有するジェロ達。

「皇国の子爵はあのぐらいの屋敷なんだと最初は思ったんだけど」

「いえいえ、そんなわけがありません。お話のありましたように、内密の話をするための別邸ですね。おそらく親密な商家の娘でも囲っているのでしょう」

ジェロの感想に対してマドロールが指摘する。

「色々が落ち着かれた際には、王都ミューコンにも立派なお屋敷をご用意されますように」

「いやいや、ガニーの屋敷も出来上がっているかわからないのに……」


「ジェロ様、横道ばかりで。本題に戻って良いですか?」

「あ、ごめん。うん」

「つまり我々はまだこのベルカイム王国の屋敷で待機、なんですかね?」

「そうなりますね。あのサリニャック子爵が登城して、おそらく皇太子殿下ご本人とお話をされ、ワイバーン討伐の周知を大々的にされるのかと。その際に、第3皇子たち武官系の協力がなかったのに、誰が倒した?となります。そこからがわかりませんが、文官系ばかりの皇太子派閥に武に優れた者がいると隠して言うのか、冒険者を雇って対応したと言うのか」

「後者ならば金級冒険者ジェロマン様が堂々と登場するけれど、前者ならば武官達の詮索から逃げ回ることになるのかしら」

「後者でも武官達から恨みを買いそうだな……」

「ジェロ様、八方美人は政治や外交の世界においてあり得ませんよ」

「コンヴィル王国とラーフェン王国の合同使節団の意図も伝えてありますし、大国である皇国としていつまでもムスターデ帝国の無法を許してなるか、という思考もあると思います。皇国内の派閥争い以外にこれらの要素を踏まえて、どのようにご判断されるか」

「つまりマドロールでも分からない話になるなら、我々は待機するしかないのよね」

リスチーヌの結論に皆が頷く。

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