第445話 王都ルージャンでの騎士団長

一方、王城内にある騎士団の団長室で不機嫌に酒を煽る男。

ベルカイム王国の騎士団長ラウル・ノヴェールである。

「コンヴィルやラーフェンの合同使節団を見送るのに駆り出されて、騎士は警備兵ではないわ!」

との怒りもおさまらないうちに、さらに不快な報告がされたのである。


「何!失敗しただと!」

ランソンヌの街の東の山脈で、宰相のたくらみを邪魔しようと派遣したはずの騎士団員からの報告である。さらに、派遣を率いていたはずの将官と、帝国から派遣されていた士官が束縛されおそらく捕虜になっているはずという。

捕虜を奪い返そうとしたのだが、足が早く追いつけていないという。どうも王都に到着してしまっている可能性が高い。

「まずい!まずいぞ!宰相のところに連れて行ったのではないか。そうなると陛下の裁定も仰がずに帝国士官と連携していることだけでなく、他国の子爵を襲撃したことも問題になる……」


「捕虜を奪い返すか、それがかなわぬなら暗殺してしまえば証拠は無くなる」

と、騎士団でも裏の仕事を任せている部隊を呼び寄せるノヴェール。

「まずは宰相の別宅、これらのどこかが怪しいはずだ。その確認からだ。騎士団の存続の危機だ!頼んだぞ!」

「「は!」」

日頃から政敵である宰相の拠点は把握している。何としても証拠隠滅を図らなくては、身の破滅である。せっかく皇国の紐付きである宰相を追い出して、帝国の力を背景に王国での実権を握る機会だったのだ。何としてもこの危機を乗り越えるのだ。



しかし、まだ捕虜の近くにいたレナルマン達、なかでも≪飛翔≫もできるアルマティの魔法、そして襲撃に気付いたハポリエルが襲撃者の粗相のようなふりで大きな音を出して仲間達に教えたことなどのおかげで、捕虜奪還は失敗となったのである。

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