第438話 皇国への使者

どこかに向かった宰相が男を一人連れて戻って来る。

「彼の名前はモーリート。彼と共にユニオール皇国の皇都ナンテールに向かって貰えないでしょうか。ワイバーンの討伐証明をジャムス皇太子に届けて頂きたいのです」

「どういうことでしょうか?」

外交官のムランがジェロの代わりに問い返す。


宰相ジョス・ドゥネーヴは皇国寄りであることは分かっていたが、後継者争いのジャムス皇太子とマルキ第3皇子のうち皇太子派ということなのであろうか。


「今、セラフィム・カリム・ユニオール皇帝は体調不良のため、皇太子が政務を取り仕切っています。そのなか、皇国の村にてワイバーンの被害が出ていたのですが、第3皇子派閥の武官たちは皇太子派閥の文官たちへの嫌がらせのために、なんだかんだ理由をつけて討伐に踏み切らずに居たのです」

「そんな……」

「はい、そんな理由で民の被害を放置して良いわけがありません。そこでテルガニ子爵に討伐をお願いしたのです。またその討伐証明を皇太子にお渡し頂くことで嫌がらせをした武官たちの鼻を明かして欲しいのです」

「当初予定通り宰相閣下の配下の方が運ばれるわけにはいかないのでしょうか」

「お話を伺った一人目の案内人のことを踏まえると、このやりとりを認知している敵が居ることは確かです。金級冒険者でもあり腕が立つテルガニ子爵が自ら届けて頂けるのでしたら安心です」

「彼は、こちらベルカイム王国への外交使節団の一員ですので……」

「その目的はムスターデ帝国に対抗してラーフェン王国を奪還する共同戦線の仲間作りですよね?そのためにもユニオール皇国の皇太子に恩を売ると考えるのはいかがでしょうか?」

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