第409話 ニースコン深夜
元々住民のほとんどがモージャンに避難して、占拠している帝国兵もそこまでの人数は居ないため、ニースコンの深夜は静まり返っている。避難をしなかったのは、他者の足手まといになることを避ける、もしくは先祖からの土地を離れたくないという老人がほとんどである。夜に騒動を起こすのは飲んで暴れる帝国兵ぐらいであり、店も老人が運営するので早く閉まるため、深夜はほぼ警らの兵も居ない。
その静寂のニースコンの街中を流れる川。街に入るところと出るところは城壁に穴が空いているのだが、当然に防衛のための頑丈な格子がはめられており、魚ぐらいは通れるが人間が通過する隙間は無いとの思い込みが皆にある。
それにも関わらず、その城壁に開いた格子がはまった穴から流れ入ってくる川の水面から静かに頭を出す者が居た。最初に見えた頭が周りを確認して誰もいないことを確認すると水中に合図を送り、次々と水面から頭がいくつも生えてくる。
「急げ。静かにな」
黒装束に身を包んだ10人程が川から離れて建物の影に消えて行く。
「はぁ、生き返る」
「あまり長居は出来ないぞ」
「分かっているが、あんなに水中にいたことは無いからな。それにしても格子にずらせる場所があるなんて、よく知っていたな」
「あぁ、夜に城門が閉められた後に出入りする必要性があった場合のための秘密だ。これで領主様達にもバレたから今後はどうしたものか」
「とか言って。たっぷり情報料を貰ったのだろう?」
人気の無かった建物内で、小さな火をつけた暖炉で濡れた体を順次乾かしていく。
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