第368話 モーネ救出検討3

戦況などの共有をしてくれたヴァランタン伯爵にジェロからは言葉に出さずに頭を下げるだけだが、建前上の共有相手であるジュリユーは礼を言う。

「ヴァランタン伯爵、ありがとうございました!護衛対象もですが、仲間達や従士達のことも気になります。派遣軍は救出に動けないのでしょうか」

「あぁ、あの王子自身が俺たちに待機と命じたし、そもそもこちらから攻め込まないように王都で指示を受けて来ているからな。軍として攻め込むと完全に開戦になってしまい、口実を与えてしまうと戦力に劣るうちが危なくニースコンまで危険になる」

「そんな……」

「司令官も、バカ王子とゴマスリ子爵はどうであれ他の王国騎士団員の仲間は助けたいはずですよ。わざわざこのような説明をするのですから。どこかの英雄様に期待しているのでしょうね」

「お前なぁ、身も蓋もない。俺なりに立場を考えての行動なのに」

「似合いませんよ」


地図と情報を貰ったジェロは冒険者ギルドに戻ろうとするが、ジュリユーが引き止める。

「どうか私も連れて行ってください」

「いえ、冒険者として行動する私では無理とお答え済みの通りです」

「ならば私も冒険者になります。準男爵としてではなく冒険者マリユーグ・ジュリユーをお連れください」

「それでも私は家臣のみの冒険者クランで行動していますので」

「そのクランに新参者として一番下っ端として働きますので」

「テルガニ殿よ、こいつにそこまで言わせたんだ、連れて行ってやってくれないか」

「ヴァランタン伯爵……」



領主館を出たジェロは留守番に取って貰っていた宿屋で仲間達に状況を伝える。

「ごめん、勝手にヒル王子からの依頼を受けてしまった。敵兵ばかりの国に侵入する想像がつかないほど危険な依頼だから、一緒に来てとは言えない。ガニーに戻るか、このニースコンでヒル王子の護衛をして待っていて貰えないかな」

「何をおっしゃっているんですか。私たちはジェロ様の家臣です。たとえどんな危険な戦場でも付いて行きますよ。置いて行かれても追っかけますからね」

「とんだ貧乏くじになるよ」

「子供に弱いジェロ様ですから分かっていますよ」

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