第363話 一人ぼっちのヒルデリン
モージャンからニースコンへは野営を1回しただけで予定通り到着できた。今までは馬車での移動であったので、これだけの速さで到着できる戦馬バトルホースの効果を改めて実感する。モーネ王女達をニースコンからモージャンに護衛した前回にもこの馬が居れば、と思わないでもなかった。当時にそれだけの騎乗能力が無かったことは棚上げして。
「アンセルムさん、ご無沙汰しています」
まずは冒険者ジェロとしてニースコン冒険者ギルドのギルドマスターであるアンセルムに挨拶をする。先に、ガニーのメオンから預かっていた配達依頼の武器や食料を倉庫に出している。
「ジェロマンさん、いえテルガニ子爵、この度はありがとうございます」
「冒険者への依頼ですので冒険者ジェロマンで。口調も前と同じでお願いします」
「はい、では早速領主館にご一緒いただいて良いでしょうか」
「ジェロマン・テルガニ子爵、この度はありがとうございます。改めて、ニースコン領主のシャアヌール・エロー・ニースコンでございます」
「ニースコン男爵、本日は冒険者ジェロマンでお伺いしておりますので」
「そうでしたな。ではジェロマン殿、まずはヒルデリン王子殿下のもとへ」
「ジェロ、モーネ姉上が……」
部屋に入った途端にジェロの足元に抱きついて来て泣きじゃくるヒルデリン。しゃがんで
「ヒルデリン王子殿下、もう大丈夫ですよ。はい、ジェロですよ」
と抱きしめる。
「テルガニ子爵、ありがとうございます。私たちでは……」
「ユゲット様、ご無沙汰しております」
「父も恥知らずにお願いしたようで」
「いえ、お立場を踏まえると仕方ないことかと」
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