第317話 新魔法の開発
水魔法で氷を作る際に風魔法を併用することを成功させたジェロ。
『これって新魔法の開発ってことになるのか?今までの前世知識でイメージを具体化して効果を強化したのと違って』
『そうね、新しい魔法と言っても良いんじゃない』
『魔法ってそんな簡単に作って良いものなのか?』
『そうね、現代魔術が普及するまでは、基本の魔法から工夫するのは普通のことだったわよ。でもそれを一般化して普及させるのは大変よ。使用する魔力の確定、魔術語だけでなく詠唱文、魔法陣の精査など』
『うーん』
『単にイメージだけで、毎回の効果が少々変わっても良いぐらいならば簡単だけどね』
『料理のレシピみたいだな。まぁあれもプログラムみたいなものだから当然か』
『≪魔法消滅≫を習得するときにも話したけれど、相手にその魔法のことを知られていないと言うことは消滅が難しいという強みになるのよ。水属性だけでなく風属性を混ぜた≪氷結・改≫≪氷壁・改≫とでも呼ぶものは、これからのために強化して行った方が良いわね』
≪熱湯≫≪乾燥≫という複合魔法の時に並行プログラムのようであると思った魔術語を参考に、モジュール化と並列処理を組み込んだ、新魔法のための魔術語をまとめあげる。世界に対する命令語と考えると、世界は超高性能コンピュータであり無数の並列処理ができる前提で考えてある。
風魔法の工夫でさらに挑戦したいことがジェロにはあった。調合の品質向上である。
調合の手順は大きく言うと、洗浄、乾燥、粉砕、分離、溶解、励起であり、いかに不純物を混流させないかが品質の決め手となる。
≪洗浄≫で素材や器具をきれいにし、乾燥棚などでホコリなどがつかないようにする必要が無くなった≪乾燥≫を使い、落ち葉のようになった乾燥した薬草を砕くのも薬研(やげん)も使わずに≪粉砕≫魔法で粉末化できるようになっている。これらを≪簡易結界≫の中で行い、≪水生成≫の水に溶解させて、回復を促す要素を魔力で励起させる。ここまでで高級上位の品質にまで辿り着いていたのだが、“分離”についても風魔法で何とかできないかと考えたのである。ナイフなどで素材の余分なところを切除して作業するのであるが、粉末化した段階でも篩(ふるい)にかけて分離することを、風を操って行いたいのである。
『こんな感じ?』
『そうだヴァル、上手いな』
何度も挑戦し、ジェロも≪風篩≫とでも呼ぶべき魔法を作り出し、特級下位の品質のポーション調合が可能となったのである。
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