第306話 司祭ディミトリ2

結局、ザールの馬車にザールと司祭ディミトリが乗り、ジェロの馬車にはレナルマンとリスチーヌが同乗することになった。

「ザールさん、何か丸くなって優しくなった気がするのよね。モージャンのギルドマスターのとき、もっときつかったような。それほどの縁は無かったけれど」

「そうだね。モージャンでお会いしていたとき、特に最初はもっと冷たい対応をされた記憶が。もちろんメオンさんに主に対応頂いていたのだけどね」

「当時はガニーのギルドマスターであったアンブリスさんとの確執もあったからと聞いておりますね。モージャンのギルドマスターをアンブリスさんに引き継いで、自身は叙爵されて本部幹部になったことで、心に余裕が出来たのではないでしょうか」

「まぁ、冒険者ギルドとしての思惑もあるのだろうけれど、助けて貰えるのならありがたいね」


2台の馬車が到着したのは、王都ミューコンにある豊穣の女神デメテルの神殿、その隣にある孤児院であった。

「やはり王都にも孤児院はあるのですね」

「はい、街の規模が大きくなっても生活が苦しい世帯の数も一定数ありますし、身寄りが無い子供の数はどうしても」

「それでも神殿の孤児院で育てて貰えるならばありがたいことですよね」

「そう仰ってくださるテルガニ様のお気持ち、ありがたい限りです」


「あー、ディミトリ様!お帰りなさい!」

「司祭様!お帰りなさい!」

笑顔で子供達がディミトリに寄って来る。

「これ、お前達。お客様の前ですよ。お行儀を良くしなさい」

「はーい。お客様、こんにちは」

「「こんにちは!」」

「こんにちは!みんな元気だね。これはお土産だよ。皆んなで分けてね」

道中で購入した分けやすいお菓子を手渡すジェロ。相変わらず孤児院の子供に対しては人見知りをしないで済んでいる。

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