第266話 エルフ娘アルマティ

違法な奴隷契約をされていたことがわかり、強力な命令権のある犯罪奴隷契約の契約主がジェロとなったエルフの娘。

「いったんの問題は回避できたかもしれないが、これからどうしようか……せめて名前でも分かれば」

独り言のようにつぶやいたジェロに対して

「私の名前はアルマティです」

と答えてくる。

「え?話せるの?」

「前の主から、余計なことはしゃべらないように、との命令がありました。今回解除されたのだと思います」

「じゃあなんであそこにいたのか、それより前のこともわかる?」


アルマティは既に物心がついた時から両親は近くに居なく、女郎屋で育ったことを話し出す。高級店であり、客層に合わせて読み書き計算などが十分できる必要があったため仕込まれて育ってきたのだが、いよいよ成人を迎えた後に買い手がついたと運搬される途中でアンデッドたちに襲われたという。運搬の商隊はたぶん全滅しており、それ以降はあの屋敷の地下でときどき吸血鬼アリジズに血を吸われる生活であったとのこと。

アリジズの意向であろうが、地下室でも他の娘たちも含めてあまりに酷い扱いはされていなく吸血以外で身の危険性はなかった。というより、皆がアリジズに惚れて自分から何かできないか、という感じであった。解放されたとたんにその気持ちが消えたので魔法か何かにかけられていたのかも。助け出して貰って感謝している、と。

『≪魅了≫の魔法ね、きっと』


「これからどうしたい?」

「主に身を捧げるために育てられたことしかわかりませんので、今夜からお供させて頂きます」

「いや、そういうことではなく!」

「そうです!そういうことはぜひとも私に。新参者はお呼びではありません」

リスチーヌがものすごい勢いで割り込んでくる。

「そうでしたか。それは失礼しました。では私は何をすれば良いのでしょうか?」

「うーん、それを教えて欲しかったのだけど。仕方ないからしばらく一緒に行動しながら考えて貰えるかな」

「ご命令でしたら。かしこまりました」

「そうじゃないんだけど……」

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