第210話 テルガニ家の紋章

王国魔術師団の拠点の次にはアナトマ商会の王都支店に向かう。その馬車の中で

「ねぇジェロ様、本当に魔法を教えて貰えないですか?」

「偉大な魔法使いテルガニ男爵の家臣として、少しだけでも魔法が使えると良いな」

「イドまで調子に乗って。でも確かに少しでもお助けになるかもしれないので」

「レナルマンまで、そんなこと。先ほども言ったけど誰かに魔法を教えたことは無いから」

『孤児院で読み書き計算を教えていたじゃない』

『魔法ではないだろう』

「……わかりました。では3人だけでなく6人皆さんに基礎からやってみて、適性がありそうか試しましょうか」

「「「ありがとうございます!ジェロ(マン)様」」」



アナトマ商会に到着し、アナトマ、リリアーヌと応接室で対面する。

「お待たせいたしました。こちらが皆様の正装になります。試着の方をどうぞ」

ここに居る4人分だけ試着すると、互いに見違えた姿に笑いあう。

「皆さま、お似合いでございましたよ。そしてこちらが紋章の清書、指輪になります」

「あれ?こちらの紙の清書は王城に提出するとして、こちらの布での紋章が複数あるのは?」

「一つは額縁に入れてありますように、拠点を定められたときに執務室の壁にお飾りください。残りは戦場で家臣の方が掲げるためのものです」

「そんなところにまで。いずれも急なお願いにもかかわらずこれだけをそろえて頂いて本当にありがとうございます!」

「いえ、ジェロマン・テルガニ男爵。貴族の象徴である紋章に関して承れるということは、その貴族家の当初からのよしみの証であり商家の誉。それを拝命できたこと、このアナトマ、一命を助けられたとき以上の感謝を末代まで伝えさせて頂きます」

「そんな大げさな」

「婿のあてと申し上げたのは私の見込み誤り、ジェロマン様を見くびってのことになり誠に申し訳ございません。ただ引き続き我々の商会をご愛顧よろしくお願いいたします。こちらは我がアナトマ商会からのご祝儀になります」

差し出されたのは上級土魔法の≪岩槍≫の魔法カードであった。しかもジェロが探している古代魔術語である。

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