第3章 叙爵されたギルド職員

第193話 男爵叙爵

謁見室を退室した王女を含めたジェロたちはそのまま別室に案内され、しばらく待つように指示される。

「ジェロマン男爵、ザール騎士爵、皆様のおかげで私の使命は無事に果たされました。本当にありがとうございました」

「いえ、王女殿下、ザールさんのおかげです」「ザールさん、ありがとうございました」

「いえ、ジェロマン様、あなたたちの情報収集のおかげですよ」

「本当、ジェロさん、いえジェロマン様。我々は同行したのに何もすることなかったですね」

「そんな、イドさんもレナルマンさんも居て頂けるだけで安心でした」

「そうだ、ジェロマン様、あの場はかしこまりました、ではなくありがたき幸せ、ですよ」

「えー」

「他に、貴族になったのならば家名や紋章を決めるなど色々とすることがありますよ」

「ザールさん、先輩として色々と教えてください!」

「冒険者ギルドを辞めずにギルドのために働くならば……」

「私は冒険者ギルドの事務職員です!」

「そんなこといつまで言えるやら」

口調は意図して変えられてもやり取りはあまり変わらない冒険者ギルド関係者が和気あいあいと会話しているところに、ユゲットが発言してくる。

「ジェロマン男爵、貴族の営みについてはふつつかながら私達からもお教えできますので」

「ユゲット様、そんな口調はやめてくださいよ」

「いえ、男爵家ご当主様にたかが貴族の娘が無礼な発言はできません。どうかモージャン子爵家のためと思ってくださいませ」


そのような会話をしている間に、王女と王子の2人への案内がやってくる。

「王女殿下、王子殿下はご出立までの間、この王城でお待ちいただきます。どうぞこちらへ」

「わかりました、少しお時間をください……ジェロマン男爵、本当に何から何までありがとうございました」

「ジェロ、ありがとうね」

モーネ王女はいつも以上の笑顔で頭を下げ、ヒル王子はジェロに抱き着いてきてお礼を言う。何かと折をみて相手して来たジェロに対する、いつもはもっと大人しいヒル王子によるこの反応にジェロは胸を詰まらせ無言で頭をさげて見送るだけしかできなかった。

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